MIT、足で水をかかずに泳いで飛べるロボット鳥を開発
250グラムの機体が同じ柔軟な翼で水中と空中を移動し、70°の角度と8〜10回の羽ばたきで湖から離水する
MITとEPFLのチームは、約250グラムの羽ばたきロボットをレマン湖に入れた。機体は水中から上昇し、水面を抜け、同じ翼を動かし続けて飛び去った。推進器の切り替えも、水面を足でかく助走も使っていない。
- 水の密度は空気の約1000倍で、同じ翼が大きく異なる負荷に対応しなければならない。
- 柔軟な膜翼は水中で受動的に曲がり、翼端の振幅を60〜90%縮小する。離水後は飛行に必要な振幅と揚力を取り戻す。
- 離水角70°の試験はすべて成功し、約8〜10回の羽ばたきで水面を離れた。
- 論文は水中と空中をまたぐ移動を実証したが、波風、旋回、自律採取、長期海洋任務は未検証だ。
ロボット鳥が湖からそのまま羽ばたいて飛び立つ
機体は胴体、2枚の膜翼、角度を変えられる尾翼で構成される。防水モーターがクランクシャフトを介して翼を上下に動かし、尾翼が上昇姿勢と潜水を制御する。翼表面には疎水性ナノ粒子が塗布され、離水時に水を素早く落とす。
逆方向の遷移もできる。約5m/sで水に入り、約0.5m/sまで急減速した後、そのまま翼で泳ぐ。論文ではFAAV、すなわち羽ばたき式空水両用機と呼ぶ。
同じ翼を水中と空中の両方で機能させる難しさ
飛ぶロボットも泳ぐロボットも珍しくない。しかし両方を1台に詰め込むと、翼が水に触れた瞬間から要求が衝突する。
空気は薄いため、十分な揚力を得るには翼を広い範囲で速く動かす必要がある。翼が小さすぎたり柔らかすぎたりすると機体を支えられない。
水の密度は空気の約1000倍。空中と同じ振幅で翼を動かすと抗力が急増し、モーターがトルク上限に達しうる。
流体スケーリングだけなら、同程度の推進効率を保つには水中と空中で羽ばたき周波数を約12倍変える必要がある。だがウミスズメやミズナギドリなどは通常2〜4倍しか変えない。水中で振幅や翼面積を小さくし、筋肉を狭い動作周波数に保つ。
チームはロボットを再現性のある「機械の鳥」として使い、3種類の翼サイズ、5段階の剛性、羽ばたき周波数、尾翼角を変えた。動物に同じ動作を何度も指示するのは難しいが、ロボットならできる。
| 従来方式 | 遷移方法 | 代償 |
|---|---|---|
| 2系統の推進器 | 空中はローター、水中はプロペラ | 重量、抗力、構造の複雑さが増える |
| 追加の離水装置 | 浮力、燃焼、射出機構で離水エネルギーを与える | 連続反復が難しく、生体モデルとしての価値も限定的 |
| 複雑な折りたたみ翼 | 水中で能動的に翼を畳み、離水後に展開 | 関節、密封、制御工程が増える |
翼を畳まず、負荷で自然に変形させる
設計の中心は受動的な折衷だ。翼に「水中だから畳め」という指令は不要で、水が加える負荷そのものが翼を曲げる。
実験では小型翼が水中5Hzで最速の約0.95m/sだったが、低速離陸に必要な推力を出せなかった。大型翼は飛行に有利だが、水中速度は約0.64m/sに低下した。中型・中剛性が折衷点となり、水中約0.79m/s、空中平均約6.3m/sを記録した。
70°の角度で離水を3段階に分ける
柔軟性だけでは足りない。水面への進入角は翼が動ける空間を確保する必要がある。浅すぎると翼端が水を繰り返し叩き、急すぎると機体が後方へ倒れて水に戻る。
尾翼が機体を約70°に起こし、翼が水中で上向きに押し続ける。
最初の4回は主に水力推進で、第5ストロークから水面をかすめて付着水を落とす。
6〜7回目ごろに周波数が10Hzへ上がり、さらに2回の羽ばたきで尾部まで完全に離水する。
湖上試験では通常8〜10回の羽ばたきで離水した。論文で報告された70°の試験はすべて成功し、1秒以内に自由飛行へ移行した。ウミスズメやカモのように足で水をかいていない。
足で水をかかないから楽に離水できるわけではない。離水時の単位質量当たり出力は空中巡航の約2.6倍、水中巡航の10倍超で、動作全体で最も大きな力を要する。
媒体間移動は実証したが、海洋任務の実用性は未証明
研究の価値は二つある。工学的には水中と空中を繰り返し移動できる軽量羽ばたきプラットフォームを作った。生物学的には翼幅、剛性、周波数、離水角を系統的に変え、潜水鳥が似た運動戦略を使う理由を検証できる。
論文で測定済み
- 風洞、プール、水槽、屋内飛行、自然湖での複数試験
- 3種類の翼サイズ、5段階の剛性、複数の周波数
- 湖で11回、水槽で角度別に15回の離水試験
- 飛行、遊泳、離水、飛び込みを実機で記録
未実証の項目
- 波風、乱流、悪天候での安定離水
- 翼による能動旋回と完全自律航法
- 採取機器搭載時の航続と信頼性
- 長期海洋巡回と高頻度反復任務
現在の電池、出力、速度から、1回の充電で約6km飛行、または低周波羽ばたきで水中を約2km水平移動できると推定する。ただし出力モデルによる値で、任務全体の実走距離ではない。
将来は岸や船から氷山、港湾施設、クジラの群れ付近へ飛ばし、水中で測定や採取を行い、データを持ち帰る構想だ。そのためには旋回翼、波風への安定性、自律制御、通信、センサー搭載を解決する必要がある。
ひと言でまとめると:この機体の前進は水中推進器を追加したことではない。同じ柔軟な翼が流体負荷で状態を自動切り替え、水力推進から空気力飛行へ連続移行する点にある。
主な出典:MIT News;Zuffereyほか「Leaping out of the water: aerial-aquatic locomotion with flapping wings」Science 393, 207–211(2026);MIT公開論文・補足資料。
画像と映像の権利は各制作者およびMITに帰属する。速度、出力、周波数、離水角、試験回数は論文と補足資料に基づく。