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マイクロソフトはいかにして企業向け AI エージェントを大規模展開するか:本番運用可能な Agent を 5 層構造に分解する

検索は計画を立てて再試行できる子 agent へと進化し、評価は「動くかどうか」から「正しくできているか」へと格上げされた
1 分でわかる速読
  • マイクロソフト Core AI プロダクト担当バイスプレジデントの Marco Casalaina が、8 万社を超える企業の AI agent 構築・運用を支える Microsoft Foundry プラットフォームについて詳しく語った。
  • 本番運用可能な agent システムを 5 層に分解:推論層(モデルを差し替え可能)、Agent ランタイム(オーケストレーションループ)、可観測性・ガバナンス層、アイデンティティ層、コンテキスト層。
  • 検索は計画を立て、再試行する「子 agent」(agentic 検索)として再設計され、一度クエリを投げれば終わりの従来型 RAG ではなくなった。
  • 評価は汎用指標(動くかどうか)から、具体的な振る舞いに対する rubric 採点へと格上げされ、Agent Optimizer が自動で prompt を書き換え、モデルを差し替えて問題を修正する。
  • 記事は Foundry に依存せず、どんなチームでもそのまま使える 2 つの原則を示す:検索は再試行できるループにすること、動作を実行する agent には監査可能なアイデンティティを持たせること。
1プロトタイプから本番運用へ

動く demo が、本番投入した途端に壊れる

マイクロソフト Foundry プラットフォームでは、すでに 8 万社を超える企業が AI agent を構築・運用している。マイクロソフト自身の Microsoft 365 Copilot も同じプラットフォーム上で稼働し、2000 万人以上のユーザーにサービスを提供している。

「agent を本番運用に載せ、実際のトラフィックに耐えられるようにする」には何が必要なのかを明らかにするため、ByteByteGo はマイクロソフト Core AI プロダクト担当バイスプレジデントの Marco Casalaina にインタビューした。彼が語った核心的な結論はただ一つ:本番運用可能な agent を支えているのは、モデルの外側にある一式の「架子」(harness)であり、それはモデルと同じくらい重要だ。
本番運用可能な agent はモデルだけでは成り立たない
本番運用可能な agent はモデルだけでは成り立たない:モデルの周りには一式のマシンがある。出典:ByteByteGo ×マイクロソフト
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なぜ注目に値するか:8 万社が Foundry 上で agent を構築し、Microsoft 365 Copilot は 2000 万人以上のユーザーにサービスを提供、自社開発 agent の月間アクティブ数は今年に入って 6 倍に伸び、プラットフォームが呼び出せるモデルは 1.1 万個を超える。これは超大規模な agent 展開の生産現場の詳細を公開している数少ない事例の一つだ。
8万+
Microsoft Foundry 上で AI agent を構築する企業数
2000万+
Microsoft 365 Copilot が支えるユーザー数
6倍
M365 Copilot の自社開発 agent の月間アクティブ数、今年に入っての伸び
1.1万+
Foundry が呼び出せるモデル数(OpenAI/Anthropic/xAI/DeepSeek/MAI)

Marco はまず、この 2 年間で何が変わったかを語った。「我々は AI の質問応答フェーズから離れつつある。2026 年には、音声をフロントエンドに使う顧客がますます増えており、我々はチャットボットの時代からも離れつつある」。旧来の形と新しい形の違いは大きい。

旧来の形・チャットボット
あなたが文字を打ち、それが返答する。答えられるのは質問だけ。答えを間違えれば、それは一度のひどい体験にすぎない。
新しい形・agent
あなたに代わって実際に仕事をやり遂げる:会議室を予約し、分析を実行し、メールを送り、チケットを起票する。フロントエンドは音声でもよく、一文字も打たなくてもいい。動作を間違えれば、それは一度のビジネス上のインシデントになる。
チャットボットから agent へ
チャットボットから agent へ:質問に答えるだけの存在から、実際に仕事をやり遂げる存在へ。出典:ByteByteGo ×マイクロソフト

まさにこの変化によって、エンジニアリングの難題はまったく別物になった。demo は一晩あれば手早く組み上げられる。モデルは十分賢く、用意したテスト prompt はすべて通り、デモは説得力があり、パイロットは一週間で本番に乗る。実際に亀裂が入るのは本番環境であり、そこでは demo では絶対に見えない問題が露呈する。

想定外の質問
実際のユーザーが尋ねる内容は、demo では一度も想定していなかったものだ。
ドキュメントの陳腐化
agent が依存する資料はいつの間にか古くなり、回答もそれにつられて誤る。
モデルがひそかに変わる
ベンダーがアップデートを出すと agent の振る舞いも変わるが、顧客からクレームが来るまで誰も気づかない。
アイデンティティも監査もない
agent は共有システムアカウントで動いており、問題が起きても誰の仕業か追跡できない。
ガードレールなしで自信満々に間違える
言ってはいけないことを、実に自信たっぷりに言ってしまう。
可観測性がない
品質が良くなっているのか悪くなっているのか、まったくわからない。
本番環境でしか爆発しない障害
本番環境でしか爆発せず、プロトタイプでは決して見えない障害。出典:ByteByteGo ×マイクロソフト

「これらのシステムを運用してきて得た最大の教訓は何か」と問われ、Marco はこう答えた:harness はモデルと同じくらい重要だ。harness とはモデルの外側にある一式のもの――ランタイム、ツール、コンテキスト検索、アイデンティティ層、ガードレール、評価器、デプロイパイプラインを指す。

モデルは数週間おきに変わり、データベースのバージョンアップのようには扱えない。Postgres のバージョンを上げれば、基本的にそのまま使えると期待できる。だがモデルはそうではなく、モデルごとに癖が異なり、harness もそれに合わせて調整しなければならない。Anthropic が Claude Opus 4.8 をリリースした後、マイクロソフトの GitHub Copilot CLI チームは harness を調整し直し、評価を再実行してからでなければリリースできなかった。

新モデルがリリースされるたびに harness を調整し直す必要がある
新モデルがリリースされるたびに、harness を調整し直し、評価を再実行してから初めて切り替えられる。出典:ByteByteGo ×マイクロソフト