プロダクト発表 · 小互解説

LM StudioがBionicを発表——オープンソースモデル専用のCodex、モデルをローカルで動かすかクラウドに上げるかは自分で決める

オープンソースモデル向けのAgent。ローカル実行は無料でデータは端末外に出ず、より強い計算力が必要な時だけクラウドに切り替えます(デフォルトでゼロデータ保持)。MacとWindows向けにプレビュー版が本日公開されました。
1分でわかる概要
  • LM StudioがBionicを発表。オープンソースモデル向けのAIエージェントで、既存のLM Studioとは別の独立した新アプリです。
  • 実際に手を動かして作業をこなせます。Workプロジェクトではリサーチ・執筆・文書処理を、Codeプロジェクトではローカルのコードベース内でのファイル検索・コード修正・コマンド実行を担当します。
  • 目玉機能は、モデルをどこで動かすか自分で選べること——ローカル実行(無料、データは端末外に出ない)、クラウドで最先端のオープンソースモデルを実行(デフォルトでゼロデータ保持)、あるいはLM Linkで同一LAN内の別のPCのモデルを借りる、の3通りです。
  • リアルタイムのローカル音声書き起こしに対応。発話からテキスト化まで全て端末内で完結し、音声はアップロードされません。
  • ローカルとLM Linkのモデルは無料で、請求先の登録も不要。クラウドモデルを使った時だけ利用量に応じてcreditsが差し引かれます。MacとWindows向けにプレビュー版が本日リリースされました。
本記事はLM Studio公式の発表内容と公式ドキュメントをもとにまとめています。製品機能・プライバシー・課金に関する説明はメーカー側の見解であり、第三者による独立した検証は行われていません。
これは何か

LM Studioが、代わりに作業をこなしてくれるアシスタントを出した

ローカル大規模言語モデルツールのLM Studioが、オープンソースモデル専用に作られたAIエージェント「Bionic」を発表しました。

ここ数年、自分のPCでオープンソースの大規模言語モデルを動かしたい人が真っ先にインストールするのは、たいていLM Studioでした。モデルのダウンロードやローカル推論といった面倒な作業を、使いやすいデスクトップアプリにまとめてくれるからです。ただ、これまではチャット画面とモデル管理機能を足したようなツールに近く、モデルと対話はできても、何か一つの作業を最初から最後までやり切ってもらうのは難しいものでした。

CodexやClaude Codeのような、文書作成やコード修正まで代行してくれる「作業型」AIアシスタントを使ったことがあるなら、Bionicが目指しているのはまさに同じ方向です。違うのは、オープンソースモデル専用に作られていて、デフォルトで自分のPC上で動く点。文書やスライド、PDFの作成・編集ができ、コードベース内のコード検索・ファイル修正・コマンド実行もこなせます。しかも資料を先によそのクラウドに渡す必要がありません。
🔑注目すべき理由:市場に出回っている「作業型」AIアシスタントの大半は、まずファイルやコード、時には音声までメーカーのクラウドサーバーに送る必要があります。Bionicはその逆で、「モデルをどこで動かすか」の選択権をユーザーに返します。ローカルという選択肢は無料で、データは終始端末内に留まります。
Bionic公式発表デモ。出典:LM Studio
従来のやり方が抱えていたジレンマ

AIに本当に作業を任せたければ、以前は二者択一だった

実際に手を動かしてくれるAIアシスタントを求めると、これまでは避けられないトレードオフがありました。

例えば、大量のリサーチノートを読ませて比較サマリーを作らせたり、プロジェクトのコードからタイムアウトのバグを見つけて直接修正させたいとします。ファイルを実際に読ませ、コードを実際に修正させるには、AIにそれらを渡す必要があります。現在最も使い勝手のいいアシスタントの多くは、処理の際に資料をメーカーのクラウドに送って一巡させます。仕上がりは見事でも、あなたの契約書やコード、録音データは、他人のサーバーを一度通過することになります。

もう一つの道は、自分でローカルにオープンソースモデルを動かすこと。プライバシーは守れますが、こうしたツールの多くはチャットレベルにとどまり、質問すれば答えてくれるものの、実際にファイルを操作させたり、一連のコマンドを実行させたり、結果を保存させたりするのは、たいてい力不足でした。

クラウドAIアシスタント

重い作業もこなせて仕上がりも良いですが、ファイルやコード、音声はメーカーのクラウドにアップロードしないと処理されません。

ローカルのオープンソースツール

データは自分のPC内に留まりプライバシーは良好ですが、多くはチャットしかできず、一連のまとまった作業はこなせません。

Bionicはこの両方を同時に手に入れようとしています。実際に手を動かして作業をこなせる上に、データを端末外に出すかどうかを自分で決められるのです。

何ができるのか

2種類のプロジェクト——文書用とコード用

Bionicは作業を2種類のプロジェクトに分けており、やりたいことに応じてどちらかを選んで始めます。

Workプロジェクト
リサーチ・執筆・分析・文書系の作業向け
  • 文書・スライド・PDFの作成と編集
  • ファイルやフォルダをドラッグして資料として投入
  • 生成されたファイルは全てプロジェクト内にまとめられ、自動保存
例:「このノートに入っているいくつかの案を読んで、それぞれのトレードオフをまとめ、推奨結論をrecommendation.mdとして保存して」
Codeプロジェクト
ローカルのコードベースでの開発作業向け
  • ファイル・検索・Git・コマンドラインツールを標準搭載
  • リポジトリ全体を横断し、一度に複数ファイルを修正可能
  • ローカルでコマンドを実行でき、変更を反映する前にdiffを提示
例:「リクエストタイムアウトを処理している箇所を見つけて、今のロジックを説明し、エラーになっているエッジケースを修正した上で、関連テストを一通り実行して」

1つのプロジェクト内で複数の独立したsession(セッション)を開き、それぞれ別々のタスクをこなせます。プロジェクトをまたいで同時に複数走らせ、いくつもの作業を並行して進めることも可能です。生成・変更されたファイルはプロジェクトのファイル領域にまとめられ、同一プロジェクト内の全sessionがそれらを共有します。Codeプロジェクトではコマンドの実行やファイルの修正を行いますが、変更を確定させる前にdiffとコマンド出力を提示し、残すかどうかはユーザーが判断します。

Bionicが文書とコードのタスクを処理
Bionicは文書・スライド・PDFの作成と編集ができ、コーディング作業もこなせます。変更のたびに自動保存されます。出典:LM Studio
最大の違い

モデルをどこで動かすかは、自分で決める

ここがBionicと大半のAIアシスタントとの最大の違いです。同じタスクでも、使用するモデルをどこで動かすか自分で決められます。

Bionicのsessionには3つの実行先を選べ、プライバシーと費用もこの3つの経路によって分かれます。

タスク Bionicに任せる作業 ローカル実行 無料 自分のPCでOSSモデルを実行 データは端末外に出ない クラウド実行 従量課金 クラウドでGLM・Kimi等を実行 既定で保持ゼロ、処理後削除 LM Linkリモート 無料 同一LAN内の別PCのモデルを借用 モデルもデータも手元に残る
タスクBionicに任せる作業
↓ 実行先を選択 ↓
ローカル実行無料
自分のPCでオープンソースモデルを実行。データは終始端末内に留まります。
クラウド実行
安全なクラウドでGLM、Kimiなど最先端のオープンソースモデルを実行。デフォルトでゼロデータ保持、処理後は即削除されます。
LM Linkリモート無料
同一LAN内の別のPCのモデルを借用。モデルもデータも自分の手元に残ります。
コア機能

3つの経路のうち2つは完全無料で、データも自分の管理下から出ません。ローカルモデルは自分のPCの計算力を使い、LM Linkは同一LAN内の別のマシンの計算力を借ります。最強の最先端オープンソースモデルを使って一番重い作業をこなす時だけ、クラウドという有料の経路を選ぶことになりますが、この経路もデフォルトでゼロデータ保持です。プライバシーと費用は、ひと目で分かり、その場で切り替えられる選択肢へと分解されています。

ここでまず、この仕組みに出てくる2つの新しい用語を説明しておきます。

ゼロデータ保持(ZDR)とは

ZDRはZero Data Retentionの略称です。クラウドサーバーに送った内容は、モデルが処理し終えた瞬間に破棄され、サーバー側にデータのコピーは残りません。クラウド推論サーバーは全て米国に設置されており、このポリシーは全ラインでデフォルトで有効になっています。

LM Linkとは

LM Linkは、Bionicが同一LAN内の別のPCにあるモデルを借りて使える仕組みです。例えば自宅のデスクトップに大型のグラフィックカードが挿さっていて、ノートPCの計算力が足りない場合、ノートPCをデスクトップに接続してそのモデルで計算させることができます。モデルもデータも自分の端末同士でやり取りされ、外に出ることはありません。この経路もローカルと同様に無料で、creditsを消費しません。

クラウドの最先端オープンソースモデルGLMとKimi、デフォルトでゼロデータ保持
最も重い作業をこなす時は、クラウドに切り替えてGLM、Kimiなどの最先端オープンソースモデルを実行できます。クラウドは全ラインでデフォルトでゼロデータ保持です。出典:LM Studio
アプリ内で直接ローカルにオープンソースモデルをダウンロード
日常のチャットから複雑なagenticタスクまで、アプリ内で直接最新のオープンソースモデルをダウンロードし、ローカルで実行できます。出典:LM Studio
もう一つのプライバシーポイント

話しかけても、文字は自分のPCから出ない

タイピングだけでなく、Bionicは話しかけることもできます。ローカルのリアルタイム音声書き起こし機能を搭載しており、自然に話しかけるとその内容がリアルタイムでテキスト化されます。

ポイントは処理される場所です。音声とオーディオデータは終始端末のローカルで書き起こされ、自分のPCから出ることはありません。これはタイピングでローカルモデルを使うのと同じ考え方で、最もプライベートな部分のデータを自分の手元に残しています。

Bionicのローカルリアルタイム音声書き起こし画面
Bionicと自然に会話でき、音声はリアルタイムで書き起こされます。音声・オーディオデータはローカルで処理され、端末外に出ません。出典:LM Studio
基盤と使い始め方

基盤はLM Studio、MacとWindowsで今すぐインストール可能

自分のPCで各種オープンソースモデルをスムーズに動かせるのは、Bionicの土台にある、長く磨き込まれてきた推論技術のおかげです。

LM Studio runtimeLM Studio独自のローカルモデル実行基盤
MLXAppleがApple Siliconチップ向けに開発した機械学習フレームワーク
llama.cpp広く使われているオープンソースのローカル推論エンジン

はっきりさせておきたいのは、Bionicは既存のLM Studioとは別の、独立した新アプリだという点です。より低レベルの高度な設定を行いたい場合は、既存のLM StudioをBionicと併用し続けることができます。

料金はかかるのか

ローカルモデルとLM Linkのリモートモデルはどちらも無料で、creditsも消費せず、事前の請求先登録も不要です。creditsが差し引かれるのは、sessionがクラウドモデルを使った時だけで、消費量は選んだモデルと処理した文字数によって決まります。アカウントはPersonal(個人)とOrganization(チーム)の2種類に分かれます。現時点でタスクごとの固定単価は公表されておらず、利用量ページで累計消費量を確認できるのみです。

3種類
モデル実行先:ローカル / クラウド / LM Linkリモート
2種類
プロジェクト種別:Work(文書・リサーチ)/ Code(ローカルコードベース)
ゼロ
クラウド推論のデフォルトデータ保持(ZDR)、サーバーは米国設置
Mac + Win
本日プレビュー版公開、ローカル実行は登録不要
🧰 スタートガイド · LM Studio Bionic
アクセスlmstudio.ai/bionic
価格ローカルモデル+LM Linkリモートは無料、請求先登録不要。クラウドモデルは利用量に応じてcreditsを消費(固定単価は未公表、選択モデルと処理文字数で決定)。Personal / Teamアカウントに分かれる
利用条件Mac / Windowsでダウンロードしてすぐ使用可能、ローカル実行は登録不要。クラウドの最先端モデルを使う場合のみログインとチャージが必要
出典:LM Studio公式ツイートスレッド(2026-07-17)および公式ドキュメント lmstudio.ai/docs/bionic(quick-start、credits and usageなどを含む)。製品機能・プライバシー・課金に関する情報はメーカー側の見解であり、第三者による独立した検証は行われていません。Bionicは現在、初期プレビュー版(initial preview)です。