プロダクト発表・小互解説

LiveKit、Gemma 4 31B をリアルタイム音声向けに最適化——GPT-4.1 より応答5倍速、コストは6分の1

LiveKit 自社の推論プラットフォームで Google の Gemma 4 31B を稼働——音声 Agent 向けに特化最適化。速くて安く、性能もそのまま。コード1行の変更だけで利用可能です。データはすべて LiveKit による自社計測です。
30秒で分かる要点
  • LiveKit が新サービスを公開。自社の推論プラットフォーム「LiveKit Inference」上で Google の新世代大規模モデル Gemma 4 31B を稼働させ、音声 Agent 向けに最適化しました。
  • Gemma 4 は Google DeepMind によるオープンソースモデル(Apache 2.0)。重みが公開されておりローカルでも実行可能で、事前学習は140以上の言語をカバーしています。今回の 31B は30.7B パラメータ、256K のコンテキスト長を持ち、テキストと画像の両方を読み込めます。
  • 開発者に伝えたいことは一つ——「私たちのプラットフォームで Gemma 4 を動かせば、速くて安く、効果も良好。音声 Agent の構築にぴったりです」ということ。
  • GPT-4.1 と比較すると、応答の遅延は5.2倍低く(ファーストトークンが192ミリ秒対1006ミリ秒)、コストは約83%削減(おおよそ6分の1)です。
  • 性能も手を抜いていません。ホテルフロント業務のシナリオテストでタスク完了率88%を記録し、GPT-4.1(73%)や Gemini 2.5 Flash(64%)を上回りました。
  • なぜこれほど速いのか——LiveKit は同一データセンター内に専用 GPU をホスティングし、低遅延に特化して最適化。導入も、モデルを google/gemma-4-31b-it に向けるコード1行を変更するだけです。
これは LiveKit 公式プロダクトページの解説記事です。ページ上の遅延・コスト・性能スコアはすべて、LiveKit が自社の「ホテルフロント」リファレンス Agent を自社プラットフォーム上で動かして得た自社計測の結果であり、コストは LiveKit Inference の公式価格による比較です。第三者による検証は経ていません。
LiveKit がやったこと

Google の Gemma 4 を自社プラットフォームへ——音声専用にチューニング

音声 AI 企業の LiveKit が新サービスを公開しました。自社の推論プラットフォーム「LiveKit Inference」上で Google の新世代オープンソース大規模モデル Gemma 4 31B を稼働させ、音声 Agent 向けに専用最適化を施したものです。

開発者に伝えたいメッセージは実質一つ——「私たちのプラットフォームで Gemma 4 を動かせば、速くて安く、効果も十分。人とリアルタイムに会話できる音声 Agent(電話対応のカスタマーサポートや音声アシスタントなど)の構築にぴったりです」。
まず覚えておきたい3つの数字:応答までの待ち時間はわずか192ミリ秒(GPT-4.1は1006ミリ秒)、コストはおよそ GPT-4.1 の6分の1、ホテルフロントテストでのタスク完了率は88%(GPT-4.1 は73%)です。
192ms
応答開始までの待ち時間。短いほど人間らしい
1/6
コストはおよそ GPT-4.1 の6分の1
88/100
ホテルフロントテストのタスク完了率

まずは公式デモ動画で、応答の速さを体感してみましょう。

Google 公式公開動画(中国語・英語バイリンガル字幕):「LiveKit ホテル」フロントの音声デモ。受付担当は Gemma 4 31B が駆動し、予約の会話をリアルタイムで完結。その後、ファーストトークン192ミリ秒、初回発声354ミリ秒の遅延データが示されます。出典:Google Gemma
まずは Gemma 4 を知る

これは一体どんなモデルなのか

LiveKit がどう最適化したかを話す前に、まず Gemma 4 自体を知っておきましょう。これは Google DeepMind が今年発表したオープンソースモデルファミリーで、「オープンウェイト」路線を採っています。重みが公開されており、緩やかな Apache 2.0 ライセンスの下で誰でもダウンロードして使え、自分のマシン上でローカル実行することも可能です。クラウド API を必ず経由する必要はありません。

開発元
Google DeepMind。オープンソースモデルで、Apache 2.0 ライセンスにより無償商用利用が可能です。
ローカル実行は可能か
可能です。ファミリー全体で5つのサイズ(E2B、E4B、12B、26B A4B、31B)があり、最小のものはハイエンドスマートフォンやノートPCにも収まります。31B クラスはコンシューマー向け GPU やワークステーション向け。Ollama や LM Studio にも既製版が用意されています。
対応言語
事前学習は140以上の言語をカバーし、そのまま35言語以上(中国語を含む)に対応しています。
今回使用する31B
30.7B パラメータの Dense モデルで、256K のコンテキスト長(数十万字相当)を持ち、テキストと画像の両方を読み込めます。関数呼び出し(Function Calling)をネイティブサポートしており、Agent 構築に向いています。

LiveKit が今回選んだのはこの 31B クラスです。ファミリーの中で最も高性能でありながら、扱いに困るほど大きくもなく、サーバー上で音声 Agent 用に稼働させるのにちょうど良いサイズです。これ以降に挙げる数字はすべて、この 31B クラスを LiveKit プラットフォーム上で動かして得たものです。

コアとなる強み

速くて、安くて、賢い

LiveKit は Gemma 4 31B を、市場の主要な商用大規模モデルと並べて比較しました。相手は GPT-4.1、GPT-4.1 mini、Gemini 2.5 Flash です。結論はシンプルに「速い・安い・賢い」の3点。順番に見ていきましょう。

速さ:応答はほぼ即レス

テキストチャットなら、AI が2秒考えてから返してきても誰も気にしません。しかし電話となると話は別です。話し終えた瞬間、相手の沈黙が0.5秒を超えると違和感を覚え、1秒を超えると会話がいかにも不自然になってしまいます。この「どれだけ速く話し出すか」を測る指標が「ファーストトークン遅延」で、話し終えてからモデルが最初の一語を出すまでの待ち時間を指します。Gemma 4 31B はわずか192ミリ秒、GPT-4.1 は1006ミリ秒。この800ミリ秒あまりの差が、「即レス」と「気まずい沈黙」を分ける境界線と言っていいでしょう。

ファーストトークン遅延の比較(ミリ秒、短いほど速い)
Gemma 4 31B
LiveKit
192ms
GPT-4.1 mini
OpenAI
802ms
Gemini 2.5 Flash
Google
911ms
GPT-4.1
OpenAI
1006ms

💰コスト:2割にも満たない出費

コスト面は実際の価格で見てみましょう。大規模モデルは token(おおむね文字・単語に対応)単位で課金され、入力と出力で価格が分かれます。以下は100万 token あたりの公式価格(米ドル)です。

100万 tokenあたり入力出力
Gemma 4 31B
LiveKit
$0.40$1.20
GPT-4.1 mini
OpenAI
$0.40$1.60
GPT-4.1
OpenAI
$2.00$8.00

GPT-4.1 と比較すると、入力価格は5分の1(0.4ドル対2ドル)、出力価格は7分の1未満(1.2ドル対8ドル)です。音声シナリオでよくある入力対出力 3:1 の混合比率で計算すると、総合コストはおよそ GPT-4.1 の6分の1、つまり約83%安くなります。同じく低価格を売りにしている GPT-4.1 mini と比べても、出力価格はさらに低いのです。24時間365日電話を受け続け、使用量に応じて費用がかさむ音声サービスにとって、これはかなりの節約になります。

🧠賢さ:安くて速いのに、鈍くはなっていない

安くて速いとなると、誰もが気になるのは「その分、性能が落ちていないか」でしょう。LiveKit は性能をいくつかの項目に分けてスコアリングしており、使用したのは同じ「ホテルフロント」リファレンス評価です。結果はほぼ全項目で満点近く。ツール呼び出し・複数ターンにわたる会話の一貫性・情報の正確性はすべて満点、指示遵守は98点、簡潔さは96点、総合のタスク完了率は88点でした。音声アシスタントにとって、手順通りに一つずつ業務をこなし、それまでの会話内容を覚えておく能力は、まさにこれらの項目にかかっています。

性能の内訳(満点100、高いほど良い)
ツール呼び出し精度
100
複数ターンの一貫性
100
情報の正確性
100
指示遵守
98
簡潔さ
96
総合タスク完了率
88

速さ・コスト・賢さの3項目を一つの表にまとめると、Gemma 4 31B の行はすべてでトップを取っています——遅延が最も短く、コストが最も低く、性能スコアが最も高い。リアルタイム音声というシナリオにおいては、この中で最もコストパフォーマンスの高い選択と言えます。

モデルファーストトークン遅延相対コスト性能スコア
Gemma 4 31B
LiveKit Inference
192ms88
GPT-4.1 mini
OpenAI
802ms約1.2×69
Gemini 2.5 Flash
Google
911ms約1.4×64
GPT-4.1
OpenAI
1006ms約6×73
どうやって実現したのか

同じモデルなのに、なぜ LiveKit 上ではより速いのか

同じ Gemma 4 31B でも、稼働させるプラットフォームが違えば速度は数倍も変わります。LiveKit いわく、これは意図的に選んだ路線であり、アーキテクチャもハードウェアも「速さ」を追求して最適化したとのことです。

まず区別すべき2つの言葉——スループット と 遅延

スループットとは、1台のサーバーが1秒間に処理できるリクエスト数のことで、高いほどコストを分散できます。一方、遅延とは1回の応答にかかる速さのことで、ユーザー体験を左右するのはこちらです。他社の推論プラットフォームの多くはスループットを重視し、一度に多くの処理を引き受けてコストを抑えますが、その代償としてリクエストが行列に並び、遅延が増える可能性があります。LiveKit はその逆を行きました。遅延を最小限に抑えるため、あえて処理量を絞る選択をしたのです。音声アシスタントは1秒たりとも待てないからです。

ハードウェア面では、LiveKit は同一データセンター内にホスティングされた専用 GPU を使用しており、モデルと計算リソースを近接配置することで迂回を減らしています。計測結果では、話し終えてから最初の返答が聞こえるまで、LiveKit はわずか354ミリ秒。一方、OpenRouter のような複数プロバイダー間で転送する従来型ルーティングでは1876ミリ秒かかります。1秒あたりの生成文字数も天と地ほどの差があります——158 対 33 です。

LiveKit・専用GPU近接配置
354ms
話し終えてから最初の返答が聞こえるまで
158
1秒あたりの生成文字数
OpenRouter・テスト時の最適ルート
1876ms
話し終えてから最初の返答が聞こえるまで
33
1秒あたりの生成文字数

補足しておくと、OpenRouter はリクエストを複数の第三者プロバイダー間で転送する仕組みのため、遅延や可用性はルートによって変動します。ここで挙げた数値は、テスト時に選択できた最適な Gemma 4 31B ルートによるものです。

開発者はどう使うか

コード1行の変更だけで切り替え完了

導入は非常に手軽です。すでに LiveKit Agents で音声 Agent を構築している場合、Gemma 4 31B に切り替えるには設定を1行追加し、モデルを指定するだけ。それだけで LiveKit の GPU 計算リソースをそのまま利用できます。

音声 Agent を Gemma 4 31B に向ける(コード1行)
# Gemma 4 31B,跑在 LiveKit 自己的 GPU 上
from livekit.agents import AgentSession

session = AgentSession(
    llm="google/gemma-4-31b-it",
)

これらの数字がどこまで信頼できるか、LiveKit は測定基準も明らかにしています。ページ上のすべての数値は、同一のオープンソース「ホテルフロント」リファレンス Agent(GitHub 上で公開)を使い、同一の評価フロー、同一の遅延定義に基づき、実際の音声通話を想定した方法で計測されたものです。ファーストトークン遅延は各シナリオ・各対話ターンごとに繰り返しサンプリングされ、性能スコアはタスク形式の採点を伴う同一の対話セットを使用しています。比較対象は GPT-4.1、GPT-4.1 mini、Gemini 2.5 Flash。これらはすべて LiveKit 側が提供したデータであり、最終的には公式ページの内容が基準となります。

🧰 導入カード・LiveKit Inference(Gemma 4 31B)
価格約 GPT-4.1 の6分の1(LiveKit Inference の公式価格、入力対出力 3:1 混合比較)
導入条件既存の LiveKit Agents プロジェクトがあれば、モデルを google/gemma-4-31b-it に向けるだけ。コード1行の変更で完了
出典:LiveKit プロダクトページ『Gemma 4 31B on LiveKit Inference』 https://livekit.com/products/inference/gemma-4 。ページ上の遅延・コスト・性能データはすべて、LiveKit が自社リファレンス Agent を自社プラットフォーム上で計測した自社結果であり、第三者による検証は経ていません。本記事は日本語版の解説記事であり、迅速な理解のためのものです。詳細と最新価格は公式ページをご確認ください。