製品リリース · 小互解説

Google が Gemini を一挙3モデル発表、待望の 3.5 Pro だけが不在

3つとも Flash 系列。主力モデルは出力の文字数を3分の2削減、最安モデルはテキスト出力価格が逆に3分の2値上がり、3つ目は政府と信頼できるパートナー限定です。
1分でわかる要点
  • Google が7月21日、Gemini を一度に3モデル発表。すべて Flash 系列です — 主力の 3.6 Flash、3.5 系列で最速かつ最も安い 3.5 Flash-Lite、脆弱性発見に特化した 3.5 Flash Cyber
  • 待たれていた 3.5 Pro は登場せず。フラッグシップの Pro 系列は 3.1 Pro Preview のまま止まっています。発表ページには「パートナーとテスト中」の一文だけ。同時に Gemini 4 の事前学習開始も告知されました。
  • 主力の 3.6 Flash の売りは「あまり喋らない」こと。同じソフトウェアエンジニアリングのタスク群で、出力は27.6万トークンから9.7万トークンへ。正答率は逆に37%から49%へ上昇し、出力価格も9ドルから7.5ドルに下がりました。
  • 3.5 Flash-Lite は毎秒350トークンを吐き出し、3.5 系列で最速。ただし出力価格は前世代比66.7%の値上げです。発表ページは「コスパが高い」としか書いていません。
  • 3.5 Flash Cyber は一般販売なし。政府と信頼できるパートナー限定です。CyberGym で83.2%を記録し、図中の5つの構成では4位でした。
本記事のデータは Google 公式の発表ページと DeepMind ブログに基づきます。ベンチマークは公式の自社測定値です。CyberGym の競合スコアは、DeepMind ブログの脚注によれば各社の自己申告値です。価格とバージョンの状況は Gemini API 公式価格ページで照合しました。
今回のリリース内容

一挙に3モデル、みんなが待っていたあれは来ず

Google は2026年7月21日、Gemini を一度に3モデル発表しました。3つとも安くて速い Flash 系列で、フラッグシップは1つもありません。

主力モデル · 本日利用可
Gemini 3.6 Flash
日常業務を担う階層の世代交代です。コーディング、ナレッジワーク、マルチモーダルが全面的に向上。狙いは出力の文字数を削ることにあります。
入力 $1.50出力 $7.50API / AI Studio / Gemini アプリ
3.5 系列最速 · 本日利用可
Gemini 3.5 Flash-Lite
低レイテンシと高スループットの階層。発表ページが名指しした用途は agentic 検索と文書処理です。
入力 $0.30出力 $2.50毎秒350トークン
専用モデル · 購入不可
Gemini 3.5 Flash Cyber
3.5 Flash をファインチューニングしたもので、やることは一つだけ — ソフトウェアの脆弱性を発見し、検証し、パッチを書く。一般販売はしません。
限定パイロット予定政府と信頼できるパートナーのみCodeMender(Google のコードセキュリティ Agent)経由で提供
不在
Gemini 3.5 Pro
発表ページは2回言及しています。冒頭では「パートナーとテスト中、準備ができ次第広く提供」、末尾では「近く発表できることを楽しみにしている」。日付もベンチマークも価格もありません。
パートナーとテスト中

Pro 系列の最新はいまだに 3.1 Pro Preview

Gemini API の公式価格ページを見ると、Pro 系列に掲載されている最新モデルは gemini-3.1-pro-preview、しかもプレビュー版です。今回追加された 3.6 Flash と 3.5 Flash-Lite はどちらも正式版です。

Flash 系列 · 主力
3 Flash Preview 3.5 Flash 3.6 Flash · 本日
Flash-Lite 系列 · 最安
2.5 Flash-Lite 3.1 Flash-Lite 3.5 Flash-Lite · 本日
Pro 系列 · フラッグシップ
3.1 Pro Preview · 現時点で最新 3.5 Pro · 不在
Pro 系列で公開されている最新モデルは依然として 3.1 Pro Preview で、プレビュー状態です。3.5 Pro は今回のリリースには含まれませんでした。
次世代
Gemini 4 · 事前学習を開始済み

発表ページは末尾で次世代の進捗にも触れています。

私たちはこれまでで最も野心的な事前学習を開始しました。目標は Gemini 4 で、進捗は非常に有望です。 Google Blog、2026-07-21(原文:We have started our most ambitious pre-training run yet, for Gemini 4)
公式デモ

Demo Lab の8本、利用可能な2モデルが実際に動く様子

発表ページには本文とは別に Demo Lab のデモ動画群が置かれ、利用可能な2モデルが実際のツール上で動く様子を見せています。

3.6 Flash の4本

財務データと議事録の解析
AI Studio 上で Managed Agents を使い、3.5 Flash より効率的かつ正確に財務データと文字起こしを解析・分析します。
Google AI Studio
コード移行、2モデルを並べて実行
Antigravity 上でマルチ Agent オーケストレーションによりコード移行を実行。3.5 Flash よりレイテンシが低く、品質も高くなっています。
Google Antigravity
自分用の制作ツールをその場で作る
Gemini アプリの canvas 上で、3D ワークフロー向けの写真テクスチャ抽出ツールをゼロから作り上げます。
Gemini アプリ · canvas
コンセプトからインタラクティブなプロトタイプへ
Antigravity 上で tldraw のオフラインエディタと組み合わせ、操作できるテーマスタジオを制作。強力な視覚理解能力が支えています。
Google Antigravity

3.5 Flash-Lite の4本

膨大な EC データから商品特徴を抽出
巨大な EC データセットから商品の特徴を抽出し、統合します。
高スループットのバッチ処理
Web デザイン案を一気に25本
3.6 Flash がメイン Agent として指示を出し、3.5 Flash-Lite が量産を担当。それぞれ異なる、すぐにクリックして確認できるデザイン案を25本、瞬時に生成します。
2モデルの連携
大量のレシート認識と翻訳
大規模なレシートの解析と翻訳を行います。
高スループットのバッチ処理
遊べるゲームを素早く作る
複数のゲームプレイ案を一度に生成し、何度も反復して、そのままゲームとして仕上げます。
高速な反復
この8本のデモは Google が撮影・公開した公式素材です。日本語の説明は、公式が各動画に付けた原文の説明に沿って訳しました。ただし「レシートの解析と翻訳」の1本は、公式がタイトルのみで説明文を付けていません。
主力モデル

3.6 Flash の売りは「あまり喋らない」、同じタスクで文字数3分の2減

同じ長期タスクのソフトウェアエンジニアリング課題で、前世代の 3.5 Flash は平均27.6万トークンを吐き出してようやく終わっていました。3.6 Flash はわずか9.7万トークン。3分の2近く喋らなくなったのに、正答率は逆に37%から49%へ上がっています。

この2組の数字は公式が公開した2枚の図によるもので、どちらも同じ評価 DeepSWE v1.1 です。測っているのは、モデルが長時間続けて作業するタイプのソフトウェア業務 — 実在のコードベースを読み解き、問題箇所を特定し、コードを直し、テストを走らせ、その結果を見てさらに直す、という一連の流れです。

DeepSWE v1.1 · 同じ評価の2つの指標
タスク1件あたりの平均出力量 (短いほど安い)
3.5 Flash
276K
3.6 Flash
97K
64.9%削減、残りは3分の1強です。
同じタスク群の成功率 (高いほど良い)
3.5 Flash
37%
3.6 Flash
49%
12ポイント上昇。
ある OSWorld verified のタスク(API 経由)で、3.6 Flash は 3.5 Flash よりトークン効率が良く、喋る量も少ない。出典:Google Blog の動画原文説明
3.6 Flash の平均出力トークン比較図
左:DeepSWE v1.1 における平均出力トークンが276Kから97Kへ減少。右:Artificial Analysis の知能指数の問題群では28Kから23Kへ。出典:Google Blog

Google が示す2つの削減幅は基準が異なります。Artificial Analysis の指数では17%減、「一部の評価、たとえば Datacurve による DeepSWE」では「最大65%」と書かれています。仕組みについて公式は2点だけ説明しています。多段タスクを終えるまでの推論ステップ数とツール呼び出し回数がどちらも減ったこと。そして精度が上がり、余計なコード変更も実行ループも減ったことです。

出力は入力の5倍高い、だから喋らないことが節約になる

あなたがモデルに送る内容が入力、モデルが返してくる内容が出力で、両者は別々に課金されます。Gemini API の価格ページ上、3.6 Flash の両者の価格差はこうです。

入力
$1.50
100万トークンあたり
あなたが送る内容
出力
$7.50
100万トークンあたり
モデルが返す内容(入力価格の5倍)

価格ページの出力欄には「including thinking tokens」と明記されており、モデルの思考過程も出力として課金されます。そして agentic なワークフローでは、モデルが自分で段取りを踏みます — ファイルを読み、ツールを呼び、返ってきた結果を見て、次の一手を決める。この積み重ねで溜まる出力量が、そのまま請求額になります。

同じタスクで、トークンはこうして一歩ずつ積み上がる 1マス = モデルが自力で1ステップ進む:考える、計画を書く、ツールを1回呼ぶ 3.5 Flash 276K 推論ステップとツール呼び出しが多い 3.6 Flash 97K Google はステップも呼び出しも減ったとする マス数と長さは概念図であり、蓄積の仕組みの説明用。実際のステップ数ではありません。

価格:出力は16.7%値下げ、発表ページに書かれていない2つの区分

発表ページの表現は「出力トークンあたりのコストがより低い」で、3.6 Flash の価格として入力1.50ドル、出力7.50ドルを提示しています。Gemini API の価格ページと照らすと、3.5 Flash の入力価格も同じく1.50ドル、出力価格は9.00ドル。つまり出力側が16.7%下がった計算です。

発表ページが触れていない区分がもう2つあります。急がないタスクはバッチ処理に回せて価格は半分。繰り返し送る長いコンテキストはキャッシュにヒットすれば100万トークン0.15ドルで、入力価格の10分の1です。

$9.0 → $7.5
出力100万トークンあたり、3.5 Flash → 3.6 Flash(入力価格1.50は据え置き)
$0.75 / $3.75
バッチ処理の入力/出力価格、通常価格の半額
$0.15
キャッシュヒット価格、100万トークンあたり
$1.00
キャッシュ保管料、100万トークン1時間あたり
Figma Make 向けにモデルを評価するとき、私たちが求めるのは品質、速度、コストのバランスです。Gemini 3.6 Flash はまさにその最適点に収まっており、デザインの品質を保ったまま、プロトタイプの探索と反復を格段に速くできます。 Matt Colyer、Figma プロダクトディレクター(Google Blog より引用)

Hebbia と Harvey という2社の顧客も名指しされ、文書解析、チャートとデータ分析、レポート起案といったマルチモーダルなナレッジワークで特に強い、とされています。

スコア

3.6 Flash は4項目すべてで前世代フラッグシップ 3.1 Pro を上回った

公式の4連棒グラフで、いちばん左の淡い色の棒が Gemini 3.1 Pro — 前述の、Pro 系列で現時点最新のプレビュー版です。発表ページの本文はこの列に踏み込んでいません。

Gemini 3.6 Flash の agentic 評価4項目の棒グラフ
agentic 評価4項目。各グループの3本の棒はそれぞれ 3.1 Pro、3.5 Flash、3.6 Flash。いちばん右の濃い青の 3.6 Flash が4項目とも最高。出典:Google Blog
評価測るもの3.1 Pro3.5 Flash3.6 Flash
DeepSWE v1.1長期のソフトウェアエンジニアリング:実在のコードベースを読み、コードを直し、テストを走らせる12%37%49%
MLE-Bench機械学習の研究(原文の表記は ML Research)42.6%49.7%63.9%
GDPVal-AA v2実在の職業における日常業務タスク。単位はパーセントではなく Elo スコア96513491421
OSWorld-VerifiedPC 操作:実際のシステム上で画面をクリックし、ソフトを開き、タスクを完了させる76.2%78.4%83.0%

GDPVal-AA v2 の行は Elo スコアで、パーセントではありません。Artificial Analysis はこの項目を「agentic な実務タスク、(Elo−500)/2000」と説明しています。

Artificial Analysis が 3.6 Flash(high 思考モード)に付けた知能指数は50点。この指数は9つの評価で構成されています。

最安の階層

3.5 Flash-Lite は 3.5 系列で最速、ただし価格は前世代より上がった

2つ目の Gemini 3.5 Flash-Lite の位置づけは低レイテンシと高スループット。発表ページが名指しした用途は agentic 検索と文書処理です。Google は Artificial Analysis のデータを引用し、毎秒350の出力トークンを吐き出す 3.5 系列最速だとしています。

公式が収録したレイテンシ比較:同じ高頻度タスクで、3.5 Flash-Lite が 3.5 Flash より明らかに先に結果を出す。出典:Google Blog
3.5 Flash-Lite と 3.1 Flash-Lite の評価2項目の比較
前世代 3.1 Flash-Lite との比較。左:Terminal-bench 2.1 が31.0%から54.0%へ。ターミナル上でコマンドラインを使ってタスクを完了する力を測る。右:GDPVal-AA v2 が642から1140へ(Elo スコア)。出典:Google Blog

公式は図にない項目も1つ挙げています。長文コンテキスト検索の GDM-MRCR v2 が60.1%から72.2%へ。極端に長い資料の中から、問われた箇所を正確に拾い出せるかを測るものです。

3.5 Flash-Lite と 3 Flash の評価2項目の比較
より古い 3 Flash との比較。左:SWE-Bench Pro(Public)49.6%対54.2%。右:OSWorld-Verified 65.1%対74.0%。公式はこれを根拠に、2.5 Flash や 3 Flash で回していた業務はすべて置き換えられるとしている。出典:Google Blog

発表ページが触れていないこと:前世代より高い

価格について発表ページはこう書いています — 「価格は0.3/2.5ドル、品質は 3.1 Flash-Lite より著しく優れ、コスパが非常に高い」。この一文には比較対象が欠けています。3.1 Flash-Lite はいくらだったのか。公式価格ページで補うとこうなります。

3.1 Flash-Lite3.5 Flash-Lite変化
入力価格(テキスト/画像/動画)$0.25$0.3020%上昇
出力価格$1.50$2.5066.7%上昇
入力価格(音声)$0.50$0.3040%低下
Terminal-bench 2.131.0%54.0%23ポイント上昇
GDPVal-AA v2(Elo)6421140498ポイント上昇
価格の対照

テキスト出力価格は3分の2値上がり、音声入力価格は逆に4割下がりました。発表ページは終始「コスパが高い」という言い方で、絶対価格の変化には触れていません。

もう一つの売りは、同じモデルで思考の段階を切り替えられることです。高頻度タスクでは minimal や low に設定して低レイテンシ・低コストを狙い、多段の分解が必要なサブ Agent の負荷にはより高い段階へ。すべての思考段階で 3.1 Flash-Lite を明確に上回るとしています。computer use も内蔵ツールになりました。

……(前略)Ashler の agentic な検索とツール呼び出しのタスクに必要な速度とコスト効率。断片化したインフラ記録の分析に長け、数百件の成果物の間で文脈を保ち続けます。次世代の送電網、交通網、データセンターを築く私たちのユーザーを支えてくれます。 Connor Goggins、Ashler 共同創業者兼 CTO(Google Blog より引用)

3.5 Flash-Lite は Google 検索への展開も進んでいます。

専用モデル

3.5 Flash Cyber は脆弱性発見に特化、しかも一般販売なし

3つ目の Gemini 3.5 Flash Cyber は 3.5 Flash をファインチューニングしたもので、やることは一つだけ — ソフトウェアのセキュリティ脆弱性を見つけ、実際に悪用可能だと検証し、パッチを書く。トークンあたりの価格はより大きなセキュリティモデルより安く、一般販売はしません。

DeepMind の関連ブログが示す背景はこうです。AI が脆弱性を見つける速度は、既存システムが修正する速度をすでに超えている。守る側には、高い能力と低コストを両立し、大規模に展開できる手段が要る。Google は Flash Cyber のトークンあたり価格がより大きなセキュリティモデルより安いとしています。

発想は「高価な1回の呼び出しを、安い複数回に置き換える」

深い脆弱性を見つけるには、巨大な実行パス空間を探索する必要があります。同じ関数でも、入力や呼び出し順序が変われば何千通りものパスが生まれる。超大型モデルを1回呼べばそれを全部把握できる、という期待自体がボトルネックだと DeepMind ブログは述べています。

Google のやり方は、何度も呼ぶことです。CodeMender というコードセキュリティ Agent の中で、複数の Flash Cyber Agent がそれぞれコードパスの一部をスキャンし、最後に結果を1つのレポートに統合します。

入力巨大なコードベース
何千通りもの実行パス
並列スキャン複数の Flash Cyber Agent
それぞれがコードパスの一部を分析
統合1つの高品質な
レポートにまとめる

DeepMind ブログはさらに、呼び出し回数を増やしていっても Flash Cyber は新しいコードパスと脆弱性を見つけ続けたと述べています。安いからこそ、高頻度スキャン、リリース前チェック、コミットのたびに一巡させるパイプラインに組み込めます。

CyberGym の完全な順位

CyberGym における5つの構成のスコア比較棒グラフ
CyberGym のスコア:濃い青の棒が Gemini 3.5 Flash Cyber in CodeMender(Max 5 model calls)83.2%、5つの構成で4位。縦軸は0ではなく60%から始まっている。出典:Google Blog

CyberGym は数百件の実在するソフトウェア脆弱性で AI Agent を試すものです。発表ページはこの図について「フロンティアに匹敵する水準に達した」と書き、DeepMind ブログの表現は「著しく大きいモデルを相手に競争力のある性能を示した」です。図中の5本の棒を高い順に並べるとこうなります。

順位構成CyberGym
1位GPT-5.5-Cyber in OpenAI Agent85.6%
2位Mythos 5 in Anthropic Agent83.8%
3位GPT-5.6 Sol in OpenAI Agent83.6%
4位Gemini 3.5 Flash Cyber in CodeMender(モデル呼び出し最大5回)83.2%
5位Mythos Preview in Anthropic Agent83.1%

4位で、5位とは0.1ポイント差、1位とは2.4ポイント差です。図中の自社の棒には但し書きが付いています — モデル呼び出し最大5回。DeepMind ブログの説明では、このスコアは CodeMender を「最終レポート1件あたり最大5回呼び出す」設定で得たもので、本文の脚注には競合のスコアが各社の自己申告値であると明記されています。

サイト内の関連解説
GPT‑5.6 は発表された、でも発表されていないような
ランキング3位の GPT-5.6 Sol について、小互解説サイトは2026年6月27日にそのリリースを解説しています。

V8 エンジンの一組:55 対 47 対 36

V8 は Chrome の JavaScript エンジンで、DeepMind ブログは極めて複雑だとしています。呼び出し回数を固定した条件で、3モデルがそれぞれ見つけた重複のない、確認済みの問題の件数です。

55
3.5 Flash Cyber が見つけた一意の確認済み問題数
47
本流の 3.5 Flash が見つけた件数
36
Claude Opus 4.6 が見つけた件数
10
Flash Cyber だけが見つけ、他の2モデルが見落とした件数

Google が「重複がない」という基準について説明するところによれば、能力の低いセキュリティモデルはループに嵌まりやすく、同じ問題を繰り返し報告しながら本当に重要な脆弱性を見落とす。強いモデルほど網を広く張るので、重複のない問題をより多く見つけられる、というわけです。

他の2組はいずれも一発正答率(pass@1)で採点されています。Google の Big Sleep チームが独自に組んだ評価(Chrome や Safari のような複雑なコードベースで最も見つけにくい重大脆弱性を狙って集めたもの)では、Flash Cyber は本流の 3.5 Flash と 3.6 Flash を明確に上回りました。Chrome 本番環境のコミットスキャンのパイプラインでは、3.5 Flash より顕著に向上。この組の脆弱性は一度も公開されたことがなく、Google はこれによりこのベンチマークが Gemini にも競合にもデータ汚染がないと述べています。Wiz と Cloud CISO のセキュリティエンジニアリング側テスターからの初期フィードバックも、本流の 3.5 Flash に対する能力向上を裏づけています。

DeepMind ブログはこの2組のテスト条件を明記しています。Google 側はセーフティガードを切った状態でストレステストを行いました。またコミットスキャンの組では、Claude Opus 4.6 より新しい競合バージョンが内蔵のセーフティガードによりタスクの実行を拒否したため、この図には含まれていません。

実戦:2時間で使える攻撃チェーンを掘り当てた

実例

Google Cloud の脆弱性研究チームが Flash Cyber で自社システムを調べました。2時間以内に、複数の公開 API でリモートコード実行の脆弱性を発見し、さらに機微な本番サービスでメモリ破壊の脆弱性を見つけています。

そのうえで100%確実に動くリモートコード実行のエクスプロイトを生成し、ASLR や W^X といった標準的な防御を回避しました(前者は実行のたびにプログラムのメモリ上の位置をランダムに動かすもの、後者は同じメモリ領域が書き込み可能かつ実行可能になることを禁じるものです)。

CodeMender に組み込まれた Flash Cyber は、すでに Google 社内の Chrome、Android、Cloud、Ads、YouTube のコードベースで脆弱性の発見と修正に使われています。Google によれば、その学習データには他社にない強みがあります。OSV.dev というオープンソース脆弱性データベースに集まった70万件超の脆弱性記録、そして OSS-Fuzz が10年以上積み上げたファジングの結果です。公式の言い分では、これによりモデルは合成された練習問題に留まらず、業界標準ツールの操作を覚え、Chromium のような100万行級プロジェクトのコードを読み通し、数時間続く深い分析を要するセキュリティ業務を独力でこなせるようになったといいます。

DeepMind ブログは、この技術が攻撃にも防御にも使える性質を踏まえ、Google が展開方法を意図的に設計したと述べています。一般販売はせず、今後 CodeMender を通じて政府と信頼できるパートナーに限定パイロットとして提供し、その後段階的に拡大する。発表ページは未来形で書かれており、現時点ではまだ開放されていません。一方で Google は、CodeMender の基礎的な能力を Gemini Enterprise Agent Platform 経由で一般の顧客にも開放しています。こちらは通常利用できる Gemini モデルを使います。

使い方

この2モデルは今どこで使えるか

3.6 Flash と 3.5 Flash-Lite は発表当日から使えます。

  • 開発者:Gemini API。Google AI Studio と Android Studio から接続できます。3.6 Flash は Google Antigravity にも入りました。
  • 企業:Gemini Enterprise Agent Platform。3.6 Flash は Gemini Enterprise アプリでも選択できます。
  • 一般ユーザー:Gemini アプリで選べます。3.5 Flash-Lite は Google 検索への展開が進行中です。

computer use(モデルが直接 PC の画面を操作する機能)は、Gemini API と Gemini Enterprise を通じてクライアント側の内蔵ツールになりました。新しい2モデルはどちらも対応しています。

安全面では、3.6 Flash は2方向の防御を強化しました。化学・生物・放射性・核の分野(略称 CBRN)と、サイバー攻撃への悪用です。Google はこれによりモデルが明らかに脱獄されにくくなり、同時に正当な用途では拒否が減るよう訓練したとしています。2モデルとも公開のモデルカードがあり、詳細を確認できます。

🧰 スタートカード · Gemini 3.6 Flash
価格入力1.50ドル/出力7.50ドル(100万トークンあたり)。バッチ処理は半額の0.75/3.75、キャッシュヒットは0.15。Google AI Studio には無料枠あり
ハードルGoogle AI Studio のページでモデルを選べばすぐ会話でき、コードを書くなら Gemini API へ。3.5 Flash-Lite も同じ場所で選べます
出典
Introducing Gemini 3.6 Flash, 3.5 Flash-Lite, and 3.5 Flash CyberGoogle·blog.google·2026-07-21
本サイトの注記
図表と動画はすべて Google の発表ページに掲載されたもので、うち8本の Demo Lab 動画は発表ページのメディアカルーセル内にあります。発表ページ本文以外から取った内容は2点。①3.5 Flash と 3.1 Flash-Lite の過去価格、バッチ処理とキャッシュの価格、Pro 系列のバージョン状況は Gemini API 公式価格ページより ②Artificial Analysis の知能指数50点とその9項目の構成は同サイトの評価ページより。CyberGym の順位は図中に記載された数値に沿って並べました。