通義がQwen-Image-3.0を発表 ── 3000字の指示文一本で、インフォグラフィック9枚と新聞一面をまとめて描く
- 新聞紙面、9分割の教材図、ショートドラマの絵コンテ。こうした文字の多い画像は、これまで1コマずつ生成して繋ぎ合わせるしかなかった。通義が発表したQwen-Image-3.0は単一指示の上限を4.5kトークン(中国語で約3000字)まで引き上げ、互いに無関係な9つの題材を一度に同じ画像へ収める。
- 判読可能な最小フォントサイズは10px。新聞の一面、LaTeX組版の論文1ページ、8区画に情報を詰め込んだ図鑑まで持ちこたえる。
- カバー範囲は12か国語のネイティブレンダリングと100種類以上の画風。開発ツールやフードデリバリーアプリのようなUIも実物どおりに再現する。さらにネット経由で当日の情報を取り込んで作図でき、その日の天気と観光案内を一枚にまとめることもできる。
- 生成と編集が同じモデルに入っている。既存の書籍ページへの赤ペン書き込み、破損した古画の修復、実写写真への学術的な注釈レイヤーの重ね合わせ。キャラクター設定と舞台を渡せば、画角・尺・カメラワークの指定が入った12コマの絵コンテをそのまま組み上げる。
- 阿里雲のBailianにはすでにqwen-image-3.0-proが並び、期間限定で無料。前世代のproは1枚0.5元だった。オープンな重みは2025年12月30日のQwen-Image-2512で止まったままで、3.0も今年2月の2.0も公開されていない。
3世代のモデルにはそれぞれキーワードがある。今回のキーワードは「実」
アリババ・通義(Tongyi)チームは7月21日、Qwen-Imageシリーズ第3世代の画像生成基盤モデルQwen-Image-3.0を発表した。
このシリーズは世代ごとに一言で自らを言い表してきた。初代は「準」、去年8月の発表で文字を正確に書くことを主眼に置いた。第2世代は「準・多・斉・美・真」、今年2月の発表で生成と編集を1つのモデルに統合し、1kトークンの指示文と2K解像度に対応した。今回は一文字にまとめている:実。
「実」は3つに分解される。これが今回のアップデートの能力一覧のすべてだ。
- 指示文の上限4.5kトークン
- 横展開:複数テーマの並置
- 奥行き:UIの入れ子構造
- 新聞・絵コンテ・試験問題を一発で
- 10pxの小さな文字も精密に描画
- 毛穴・髪の毛レベルの描写
- 素材と紙の質感
- 編集タスクでも小さな文字を書ける
- 12カ国語のネイティブ描画
- 100種類以上のアートスタイル
- ウェブ・ゲーム・ライブ配信UIの再現
- ネット接続で最新の世界知識を取得
公式が今回の更新に掲げた方向性は「見栄え」から「実用性」への転換で、狙っているのは新聞のレイアウト、ショートドラマの絵コンテ、複雑なUI稿といった実務のシーンだ。以下ではこの3つを順に見ていく。
指示文の上限が4.5kトークンに、複雑な内容も1ページ分を一度に指定可能に
1回の指示文には最大4.5kトークンを詰め込める。中国語にして約3000字相当だ。前世代は1kだった。指示文をどれだけ長く書けるかが、1枚の画像にどれだけの要素を盛り込めるかを直接左右する。
真ん中のバーは、Alibaba CloudのBailian API文書に明記されている数字だ。qwen-image-2.0系のプロンプト上限は1300トークン、他のモデルは800トークンで、超過分はそのまま切り捨てられる。
指示文が短かった頃は、複雑なレイアウトは分割して描いてから貼り合わせるしかなかった。9つのテーマそれぞれのタイトル、本文、数式、人物の動作を指定しようにも、1000字では半分も書き切れない。上限が3000字クラスまで伸びたことで、この手の作業がようやく「分割して貼り合わせる」から「一度で描き切る」に変わった。
公式がこの点を裏付けるために示したのが、あるグリッド画像だ。その説明文には3.7kトークンを費やしている。
どのマスを取り出しても、単独で使える1枚の画像として成立している。中央上のマスは空間幾何の完全な教材ページで、問題、前提、定理、結論がすべて揃っている。
特筆すべきは、マス内の数式展開が見せかけではないという点だ。群論のマスでは「位数72の群がいくつのSylow 3-部分群を持つか」を計算しており、72を8×9に分解し、個数は3で割って1余りかつ8を割り切るという条件を経て、答えが1か4になるまでの一連の流れがきちんと成立している。物理のマスも、離脱点の初速度から角速度の式を導く過程で、落下時間や変位の置き換えが正しく噛み合っている。
空間制御は2方向:横に並べる、縦に入れ子にする
「横展開」で試されるのは意味的な並置だ。互いに無関係な複数の概念が同一画面上に同時に現れ、それぞれが自分の領域を占め、内容が混ざらない。「奥行き」で試されるのは論理的な入れ子構造だ。1枚の画像の中に外側から内側へと何層ものUIが描かれ、各層がそれぞれの見た目を保つ。
前の節で見た3×3グリッドは横展開を裏付けるものだった。奥行きの方の例では、1本の指示文で4層の入れ子が描かれている。一番外側にVSCodeエディタ、その中でQwenチャットが開かれ、チャットの中にWeChatのスクリーンショットがあり、WeChatで送られているのはハンドドリップコーヒーの手順を示すポスターだ。
この2方向はそれぞれ異なる用途に対応する。横展開が向いているのは、1ページに複数の欄を持つもの──新聞、試験問題、教材ポスター、製品比較ページだ。奥行きが向いているのは、製品デモ資料やUIの連結図で、ある機能がどのソフトからどのソフトへ移っていくかを示すもの。以前は3枚のスクリーンショットを撮って貼り合わせる必要があったが、今は指示文一本で済む。
判読可能な最小フォントサイズが10pxに、新聞一面も論文1ページもレイアウトできる
10pxは本文の小さな文字としての下限にあたる。この水準になると、字形はぼやけて灰色の塊になりやすく、線と線もくっつきやすい。ここを支えられて初めて、文字を密に組んだレイアウトが成立する。
この能力が最も試される作業は3種類ある。
1. 数式が密集する学術組版
LaTeX組版の難所は、上付き・下付き文字、波括弧、分数線、ギリシャ文字、複数行の位置揃えが同時に現れる点にある。どこか半マスでもずれればすぐにばれてしまう。
2. 新聞のレイアウト
新聞の一面には同時に成立させるべき要素が多い。題字の筆致、日付欄の区切り線、複数の記事それぞれの見出しの階層、中央の図表カード、右側の見出し一覧欄、加えて各段の本文のベースライン揃え。どれか一つ欠けても新聞らしく見えない。
3. 情報密度の高い科学解説図
この手の図は、本文、引き出し線の注釈、凡例、縮尺がすべて詰め込まれ、文字サイズは最小まで圧縮される。それでいて、どの注釈も正しい位置を指し示していなければならない。
毛穴、髪の毛、素材の質感まで、近づいて見ても耐えられる仕上がりに
ミクロレベルの描写:人物では毛穴、産毛、肌のハイライトのグラデーションまで、人物以外の被写体では素材そのものの構造と反射まで描き込む。この能力の有無が、生成された画像を完成品として使えるかどうかを左右する。
人物:光が硬いほど、ごまかしが利かない
硬い光は肌の凹凸や毛穴のひとつひとつを明るみに出し、影の輪郭がぼやけることも許さない。下の写真では顔にさらに花の枝の影が落ちており、明暗の境目のディテールが最も腕の見せどころになる。
自然光の写真で試されるのは別の要素、髪の毛だ。風で舞う後れ毛は逆光の中で一本一本分かれて見え、なおかつ透過光の感じも出ていなければならない。
素材:まったく異なる4種類の表面
人物以外の例のほうが、カバー範囲の広さがよく分かる。刺繍を成立させるには3つのことを同時に正しく処理する必要がある。羽根の層は針目の方向で表現し、絹糸には絹らしい反射があり、下地の麻布の織り目が透けて見えること。
動物の毛になると、また別の理屈が働く。黒い毛は暗部でも階調を保ち、白い毛はフラッシュを浴びても白飛びしないこと。
岩絵で試されるのは顔料と石の関係だ。鉱物顔料が砂岩の孔隙に染み込み、なおかつ風化による剥落の斑も出ていなければならない。
最後の1枚は極端なマクロ撮影だ。油絵具の厚塗りの重なり、筆の毛の一本一本、金属の金具に入った傷と反射。
同じモデルで、ゼロから描くことも、手元の既存画像を直すこともできる
前世代から、生成と編集は1つのモデルに統合されており、モデルやAPIを切り替える必要はない。ここまで見てきたディテール表現の能力は編集モードでも同様に発揮される:小さな文字を書き加える、欠損部分を補う、注釈レイヤーを重ねるといった具合だ。以下の3組はいずれも同じ画像の変更前・変更後だ。
既存の書籍ページに手書きの書き込みを加える
難しいのは筆跡のリアリティだ。赤ペンの文字には筆圧の強弱があり、丸で囲む線は手描きらしい不揃いな楕円で、矢印の先には筆を返すような跳ねがあり、しかも印刷された文字の上に重なっていて脇に浮いているように見えてはいけない。
破損した絵画の欠損部分を補う
ここで求められるのは、補完後の筆致が原画と一致していて、継ぎ接ぎ感が出ないことだ。
実写写真に専門的な注釈レイヤーを重ねる
入力は普通のマクロ写真で、出力はそのまま学術論文の図版として使えるものでなければならない。被写体が変形せず、注釈も正しい位置を指し示している必要がある。
キャラクターと場面をひとそろい渡せば、絵コンテ1枚を丸ごと組んでくれる
ショートドラマの絵コンテは、公式が名指しで挙げる実用シーンの一つだ。これを成立させるには、モデルが3つのことを同時に保たなければならない:同一人物が十数コマにわたって同じ顔つきであること、場面がつながっていること、各コマのカメラサイズとカメラワークが明確であること。
公式が示したこの例は4枚1セットだ。最初の3枚は素材で、キャラクター設定、場面、キーとなる1カットにあたる。
4枚目は、前の3枚を1枚の絵コンテとしてつなぎ合わせたものだ。
この1枚には、ここまで見てきた能力がすべて使われている:同一人物が12コマを貫いていること、場面と天候が物語の進行に沿って変化すること(村に入る、雨が降る、扉を押す)、各コマの黒地のラベル欄には文字が密に組まれていること、そして全体としては横展開のレイアウトでもあること。10コマ目が、上で見た雨の中のシルエットのカットにあたる。
かつてこの作業を行う手順は、まずキャラクター設定を作り、次に場面を作り、そこから1コマずつ生成し、最後にデザインソフトに取り込んでレイアウトと注釈を加える、というものだった。今はこの一連の作業が一度で出てくる。
12カ国語、100種類以上のスタイル、主要ソフトのUIまで対応。さらにネット接続でその日の情報も取得できる
カバー範囲というこの軸には4つの要素がある:多言語のネイティブな描画、アートスタイルのライブラリ、ソフトウェアやウェブUIの再現、そして世界知識(ネット接続による最新情報の取得や、特定のIPキャラクターの認識を含む)だ。
多言語、しかも各言語にその土地ならではのレイアウトを合わせる
この軸は12カ国語のネイティブな描画と100種類以上のアートスタイルをカバーする。3つの例はまったく異なる3つの方向性を示している。日本語の例は漫画の扉ページで、白黒のスクリーントーン、縦書きのセリフ枠、擬音語というレイアウトの作法がすべて揃っていなければならない。
韓国語の例はECの商品詳細ページだ。左側にスペックのアイコン、中央にモデル、右側にパラメータ表、下部に4枚のシーン写真という、ひとそろいの商品ページのレイアウトになっている。
スペイン語の例は手書きに切り替わる。ホワイトボードのマーカー書体を3色使い、ニューラルネットワークの模式図と数式を添えている。
UIの再現
ウェブ、ゲーム、ライブ配信といったUIには、それぞれ独自のコントロール規範がある。製品のプロトタイプやデモ画像を作る際に、この能力がそのまま活きる。
ネット接続でその日の情報を取得
モデルが内蔵する世界知識にはカットオフ日があり、ネット接続はそこを補う新しい情報の役割を担う。「今日の杭州の天気予報の画像」を指示すると、出てくるのは天気と観光ガイドが一体になった完全な1枚だ。
特定のIPキャラクターを認識し、再創作する
この能力は顔を認識するだけでなく、そのキャラクターにふさわしい描き方までまとめて持ってこなければならない。
今どこで使えるのか、料金はいくらか、オープンソースか
発表ページは最初から最後まで、この3点に触れていない。当サイトで一通り調べた。
Alibaba Cloud・Bailianの千問(Qwen)文生図(text-to-image)価格表では、qwen-image-3.0-proはすでに一番上の行に載っており、中国本土・国際リージョンともに「期間限定無料」と表示されている。参考までに、前世代のqwen-image-2.0-proは1枚0.5元だった。
| モデル | 中国本土での価格 |
|---|---|
| qwen-image-3.0-pro | 期間限定無料 |
| qwen-image-2.0-pro | 0.5元/枚(無料枠100枚) |
| qwen-image-2.0 | 0.2元/枚(無料枠100枚) |
| qwen-image-max | 0.5元/枚 |
| qwen-image / qwen-image-plus | 0.2〜0.25元/枚 |
BailianのAPI文書ページは当日時点でまだ更新されておらず、モデル一覧に載っている最新版はqwen-image-2.0-proの6月22日版のままだった。価格表はすでに公開されているが、文書の方はもう少し待つ必要がありそうだ。ウェブ版ならQwen Chatで「画像生成」を選べばすぐに使える。
オープンソースの話は別だ。Hugging Face上のQwen組織による画像生成モデルのリポジトリでは、最後に重みが公開されたのは2025年12月30日のQwen-Image-2512だった。今年2月のQwen-Image-2.0には重みのリポジトリがなく、GitHubリポジトリの更新履歴のその項目には、ブログとQwen Chatへのリンクしか記載されていない。3.0も現時点で同様にない。
- 2025-08-02 Qwen-Image(初代、20B MMDiT、Apache 2.0ライセンス)
- 2025-08-17 Qwen-Image-Edit、2025-09-22 Edit-2509、2025-12-17 Edit-2511
- 2025-12-17 Qwen-Image-Layered
- 2025-12-30 Qwen-Image-2512(画像生成の重みが最後に更新されたのはここまで)
- 2026-02の2.0と2026-07の3.0:重みの公開なし
実際に使うときは、指示文を長めに書くといい。今回上限を4.5kトークンまで引き上げたのは、出したい文字の一つひとつ、配置したい要素の一つひとつを、すべて書き込めるようにするためだ。
画像生成が「1枚の絵を描く」から「1ページ分のレイアウトを組む」へ ── 3000字の指示文一本で、インフォグラフィック9枚を一度に
通義が7月21日に発表したQwen-Image-3.0。一度に指定できる文字数が700字前後から3000字に伸びたことで、何が変わったのかを図付きで1ページにまとめた。
↓ 1ページで読み切り・動く図が1枚あります
文生図(text-to-image)モデルとは、文章で画面の内容を説明すると、1枚の画像を生成してくれるものだ。Qwen-Imageはアリババ・通義系列のモデルで、これが第3世代にあたる。
これまでの2世代も見栄えのする絵は描けたが、「レイアウトを組む」という作業になると力不足だった。
✘ 新聞一面まるごと、9コマ連続のインフォグラフィック、数式だらけの論文1ページは、レイアウトし切れなかった
ネックは2箇所にあった。一つは指示文が長く書けないこと:前世代は一度に最大1kトークン、中国語で700字前後しか説明を詰め込めず、9つの要素を指定しようにも半分も終わらない。分割して描いてから貼り合わせるしかなかった。もう一つは文字を小さく書けないこと:本文サイズの小さな文字は縮めるとすぐに灰色の塊にぼやけてしまい、新聞や論文といったものはまさにその小さな文字によって支えられている。
今回、1回の指示文の上限は4.5kトークン、中国語で約3000字相当まで引き上げられた。同じことを指定するにしても、詳しさのレベルが大きく変わる。
直線と平面の垂直性の定理と図解を示す。
……ここまで書いたらもう限界、
残り8コマは別に8回描いて貼り合わせるしかない
3コマ目 「出師表」の文体分析…
4コマ目 放物運動の力学的導出…
7コマ目 群論のSylowの定理…
……9コマ分を一気に書き切り、3.7kトークン
指示文が書き切れるようになったことで、対応できる作業も変わってきた:
- 10pxの小さな文字クラスにも耐えられ、新聞一面、LaTeX組版の論文1ページ、文字が密な図鑑もレイアウトできる
- キャラクター設定と場面をひとそろい渡せば、12コマの絵コンテを直接組める。各コマにカメラサイズ、尺、カメラワークの注釈付きだ
- 編集と生成が同一モデルに統合:書籍ページに赤ペンの書き込みを重ねる、破損した古画の欠損を補う、実写写真に学術的な注釈レイヤーを加える
- 12カ国語をそれぞれの土地のレイアウトで組め、主要ソフトのUIも再現でき、ネット接続でその日の天気情報まで取得できる
指示文を長く書けるようになった次に出てくる問題は、3000字分の要素を1枚の画面の上にどう配置するかだ。
小互(シャオフー)の手元には2つの作業がある。一つは9コマ連続の教材図、もう一つは製品デモの連結画像だ。この2つはそれぞれモデルの異なる空間制御能力を必要とする。一方は横に並べ、もう一方は縦に入れ子にする。
横展開は1枚の画像に同時にいくつの要素を配置できるかを、奥行きは1枚の画像に何層のUIを入れ子にできるかを決める。新聞、試験問題、教材ポスターは前者を、製品デモ資料やUI連結画像は後者を必要とする。図は当サイトが作成した模式図。
今回胸を張れる数字は一つの方向だけだ:一度にどれだけの文字数を指定できるか。バーが長いほど、1枚の画像に配置できる要素も多くなる。
書ける説明の上限
中国語で700字ほど
使った指示文の長さ
- × あの生成された新聞、「4.5k」を自分で「4k」と誤植
- × ジンベエザメの図鑑の絶滅危惧レベル、2016年より前の旧版のまま
- × 重みは非公開、ウェブ版かBailian API経由のみ