プロダクト発表 · 小互解読

OpenAI が GPT-5.6 を正式発表——総合知能スコアは Claude Fable 5 に肉薄、コストは半減、ChatGPT と Codex が統合

Sol・Terra・Luna の三段階モデルと、4体のエージェントを並行動作させる ultra モードが登場。同日 ChatGPT Work もローンチ。中国語・英語二カ国語版の発表会全編を添付
要点まとめ
  • OpenAI は GPT-5.6 シリーズ三段階モデルを正式発表。フラッグシップの Sol、バランス型の Terra、コスパ重視の Luna が、本日より ChatGPT・Codex・API で順次提供開始、24時間以内に全世界展開。
  • 同日 ChatGPT Work(Codex を内蔵し、タスクを自分でステップ分解して成果物を出す agent、Claude Cowork 対抗)もローンチし、Codex アプリを新しい ChatGPT デスクトップアプリに統合。いずれも GPT-5.6 が駆動する。
  • 新モードの ultra を追加。デフォルトで4体のエージェントを協調させ、複雑なタスクを並行処理。API 側では Responses の multi-agent beta で同様の体験を自前構築できる。
  • 公式ベンチマーク:Sol は Artificial Analysis のコーディングエージェント指数で80点を記録し過去最高を更新。総合知能指数では約半分のコストと61%少ない所要時間で Claude Fable 5 に肉薄、差はわずか1点。
  • サイバーセキュリティ関連スコアが明確に跳躍(ExploitBench は47.9%から73.5%に上昇)。公式は依然「重大リスク」の閾値は超えていないとしつつ、安全対策の遮断力は約10倍に強化されたとする。
  • 価格:Sol は100万トークンあたり入力$5・出力$30、Terra は$2.5/$15、Luna は$1/$6。より安定した prompt キャッシュ機構も新設。
立場表明:本稿は OpenAI 公式発表ブログをもとにまとめたものです。文中のスコア・コスト・所要時間はいずれも OpenAI 自社測定の値で、レイテンシの一部はオフラインシミュレーションによる推定であり実測ではありません。サイバーセキュリティ関連の評価は安全対策を意図的に下げた条件下で行われたものであり、いずれも第三者による独立検証は経ていません。
▶ 発表会フル動画 · 中国語・英語二カ国語
OpenAI 公式 GPT-5.6・ChatGPT Work 発表会フル動画(約35分、中国語・英語字幕付き)。ChatGPT Work の実演デモ、Sol のトレーニング解説、プロダクトデモを収録。クリックで再生、クリックするまで読み込まれません。出典:OpenAI 公式発表会
1 発表

OpenAI がまた新モデルを発表——今回は一気に三段階

OpenAI は本日(2026年7月9日)、フラッグシップの Sol、バランス型の Terra、コスパ重視の Luna から成る GPT-5.6 シリーズを正式発表し、あわせて複数のエージェントを協調・並行動作させる ultra モードも発表した。

今回公式が押し出しているのは「より賢くなった」ではなく、「同じ作業を、より少ないトークン・より短い時間・より低いコストでこなせる」という点だ。三段階モデル名の数字は世代を表し、Sol・Terra・Luna はそれぞれ個別にアップグレードできる能力ランクを指す。
注目すべき理由:Sol は Artificial Analysis のコーディングエージェント指数で80点を獲得し、同ランキング過去最高を記録。新設の ultra モードはデフォルトで4体のエージェントを並行動作させてタスクを分解する。総合知能指数では、Sol は Claude Fable 5 にわずか1点差まで肉薄しながら、所要時間は61%少なく、コストは約半分で済む。

しかも今回はモデルを出しただけではない。同じ日に OpenAI は ChatGPT Work をローンチし、Codex を ChatGPT に統合した。それを駆動しているのがまさに GPT-5.6 だ。このプロダクトラインの変化はモデル本体に劣らず重大で、詳しくは第9節で解説する。

提供開始のスケジュール:本日より ChatGPT・Codex・OpenAI API の3箇所で同時に提供開始し、世界各地に段階的に展開、24時間以内に完了する。以下では公式が示したいくつかのテストに沿って、「どこがどう省エネになったのか」「ultra とは何なのか」を一節ずつ見ていく。

2 コストパフォーマンス

同じ賢さで、なぜもっと安く速くなれるのか

あるモデルが使いやすいかどうかを測るには、「スコアの高さ」だけでなく「そのスコアを得るのにいくらかかるか、どれだけ時間がかかるか」も重要だ。GPT-5.6 の売りはまさに後半にある——同じ一連のタスクの所要時間とコストを削り、スコアはほぼ落とさない。

公式は二つの総合テストでこれを示している。一つは Agents' Last Exam(55の専門分野をカバーする長期的なエージェントワークフロー)で、Sol は53.6点まで駆け上がり過去最高を記録、Claude Fable 5 より13.1点高い。中程度の推論設定だけでも Fable 5 より11.4点高く、コストは約4分の1で済む。より省コストなのは小型モデルの方で、Terra と Luna は約16分の1のコストで Fable 5 を上回った。もう一つは Artificial Analysis 総合知能指数(エージェント能力、コーディング、科学的推論、汎用能力をまとめて採点するもの)で、Sol は max 設定でも Fable 5 よりわずか1点低いだけだが、タスク完了にかかる時間は61%少なく、コストは約半分だ。

コア 安 · 速い 高 · 遅い(コスト・時間 →) 左上ほど優秀 Luna · 51.2 Terra · 55 GPT-5.6 Sol · 58.9 時間61%減 · コスト約半分 Claude Fable 5 · 59.9
総合知能指数:横軸はコストと所要時間を表す(左に行くほど省コスト)、縦軸はスコア。Sol は Fable 5 とほぼ同じ高さでありながら、より左寄りの位置に立つ。図は方向性を示す概念図であり、スコアは公式発表値。
わずか1点差
総合知能指数で Sol は58.9、Claude Fable 5 は59.9
61%減
同じタスク群を完了するのにかかる時間、Claude Fable 5 比
約半分
Sol の推定コスト、Claude Fable 5 の約半分
約16分の1
Terra・Luna が Agents' Last Exam で Fable 5 と互角になるまでのコスト
3 ultra モード

ultra モード:4体の AI に手分けさせて仕事をこなす

GPT-5.6 は「どれだけ時間と計算資源を思考に費やすか」の段階を調整でき、low・medium・high・xhigh から max まで揃っている。max のさらに上に新設された段階が ultra だ。これは「1体のモデルにもっと長く考えさせる」のではなく、デフォルトで4体のエージェントを呼び出し、タスクを分解して並行処理させ、最後に結果をまとめる仕組みだ。

核心的なイノベーション · その1

公式は BrowseComp(ウェブ閲覧タスク)、SEC-Bench Pro(セキュリティの概念実証)、Terminal-Bench 2.1(コマンドラインタスク)の3項目で「エージェント1体」と「エージェント4体」の成績を比較した。結論は、並行するエージェントを数体増やすことで、より短い時間でより高いスコアを得られるというものだ。BrowseComp を例に取ると、単体のエージェントはフルに8分かけて90.84%に達したのに対し、4体のエージェントなら6.58分で92.18%まで到達した。

下のエージェント数を切り替えて、この「スコア・所要時間」曲線が左上にどう動くか見てみよう(左ほど速く、上ほど正確)。

90% 70% 所要時間(分)· 左ほど速い → Claude Mythos Preview 87.9%

単体エージェントのベースライン:low から max まで、スコアは69.04%から90.84%まで一貫して上昇するが、最高スコアを出すには7.99分フルにかかる。曲線全体は右下寄り。

ultra のデフォルト設定:4体のエージェントを並行動作させると、同じ推論設定でも曲線全体が左上へ移動する。max 設定では6.58分で92.18%に到達し、単体エージェントより速く正確だ。

エージェント16体:さらに左上へ押し進める。low 設定では1分未満で86.41%、high 設定では2.79分で92.18%に達し、上限は93.4%近くまで迫る。

開発者向けには、API 側で同時に multi-agent beta が開放された。1回のリクエスト内で GPT-5.6 に複数の並行サブエージェントを走らせ、それぞれの結果をまとめさせることで、自前で ultra 相当の体験を構築できる。

🔧
使い方:ultra はプロダクトとプランの条件により開放され、誰でも使えるわけではない。ChatGPT Work では Pro・Enterprise ユーザーに開放、Codex では Plus 以上に開放される(Free、Go、および ChatGPT Work の Plus・Business ユーザーには提供されない)。有効化の方法は max 設定を選ぶのと同じで、モデル(Sol / Terra / Luna)と推論段階を選ぶ設定画面で ultra まで選び進める。API には単独の ultra スイッチはなく、Responses API の multi-agent beta を使って自前で並行サブエージェントを走らせることで実現する。
「GPT-5.6 は我々が CursorBench でテストした中でも最も強力なモデルの一つで、初期評価でも堅実な結果を示している。継続性、知能水準、全体的な効率のいずれにおいても、開発者にとって大きな前進だ。」Oskar Schulz、Cursor 社長
4 コーディング

コーディング能力はどう強化されたのか——スコアは過去最高、しかもより省コスト

Sol は現時点で OpenAI 最強のコーディングモデルだ。Artificial Analysis のコーディングエージェント指数では、max 設定で80点を獲得し同ランキング過去最高を記録、Claude Fable 5 より2.8点高く、しかも使用する出力トークンは半分未満、所要時間も半分未満、コストは約3分の1低い。ファミリー全体がその恩恵を受けている。Terra は Fable 5 をわずかに上回り、Luna は Opus 4.8 を超え、それぞれ約3分の1の時間、約半分の出力トークン、約4分の1のコストで済む。

80
Sol(max 設定)のコーディングエージェント指数、過去最高を記録し Claude Fable 5 より2.8点高い
半分未満
このスコアを得るのに使う出力トークンと所要時間、いずれも Fable 5 の半分未満
約3分の1低い
推定コストは Claude Fable 5 より約3分の1低い
2冠の過去最高
Terminal-Bench 2.1、DeepSWE の実コードベース2項目も過去最高を記録

どこで省コストになったか——モデル自身に小さなプログラムを書かせてツール呼び出しを処理させる

コーディングやツール呼び出しの多い作業では、従来の方法は「ツールを1回呼ぶたびに、その返却内容を丸ごと会話に戻し、モデルにもう一度見せて次の判断をさせる」というものだった。往復が増えるほど、消費するトークンも増える。GPT-5.6 は Programmatic Tool Calling(プログラム形式のツール呼び出し)を導入した。モデルが自ら小さなプログラムを書き、メモリ内で複数のツールを連続して調整・不要な中間データを取り除き、重要な節目でだけ結論を自分自身に持ち帰る。

従来の方法:一手ごとにモデルを経由する モデル ツール モデル ツール モデル ツールの返却内容が丸ごとモデルに戻され、往復が増えるほど消費トークンも増える。 新しい方法:モデルが小さなプログラムを書き、自らメモリ内で実行する モデル モデル メモリ内の小プログラム ツールA ツールB ツールC 選別 · 有用な中間結果だけ残す プログラムが自ら連続してツールを呼び出し、不要なデータを取り除き、重要な結論だけを一度だけモデルに持ち帰る。
同じツール呼び出しの多いタスクでも、従来の方法はモデルとの往復を繰り返すが、新しい方法は中間過程をメモリ内の小プログラムに収める。
たとえるなら

インターンにリストを渡して雑用を自分で処理させ、重要な節目にだけ報告に戻ってきてもらうようなもの。一手ごとに電話で指示を仰ぐ必要がない。往復が減れば、消費するトークンも回り道も減る。

副次的なメリットとして、中間データがすべてメモリ内で処理され保存されないため、Programmatic Tool Calling は Zero Data Retention(ZDR、処理後にいかなるデータも保持しない)というコンプライアンス要件を自然に満たしている。医療や金融といったデータに敏感な業界がツール呼び出しの多いワークフローを導入する際に適している。

5 デザイン能力

自分で仕上がりを見て、問題を見つけて直せるようになった

GPT-5.6 にはインターフェースデザインで一つの変化がある。大まかな方向性さえ与えれば、見た目が良く、使い勝手の良い、実用的なインターフェースを作れる。さらに重要なのは、より強化されたコンピュータ操作能力によって、自分がレンダリングした成果物を実際に見ることができ、コードを吐き出すだけにとどまらず、見た目や機能上の不具合を見つけて自分で直してから返せるようになった点だ。

公式が挙げた最初の実例は、GPT-5.6 がたった一つの高レベルな指示だけで作り上げたヨットレースのミニゲーム Saltwind。すぐに遊べる3Dウェブゲームだ。下に埋め込まれているのがそのゲーム本体で、「START REGATTA」をクリックすれば実際に船を操縦できる(キーボードの A/D で舵取り、W/S で帆の調整、スペースで加速)。

Saltwind:GPT-5.6 が一言のプロンプトから生成した、遊べる3Dヨットレースゲーム(風を読み、門をくぐり、陽光の海面でより速い航路を追いかける)。上部でリアルタイムに動いているのがそのゲームで、そのまま船を操縦できる。ネットワークの都合で読み込めない場合はこちらまたは原文で体験可能。出典:OpenAI 公式ブログ

もう一つの流れは、一言の自然言語をインタラクティブな解説ページに変えることだ。ChatGPT Work では、公式が3つの例を示している。インタラクティブなスピログラフ、波の干渉、GPT トークナイザーの可視化——いずれもスライダーを動かせばリアルタイムに再計算されるウェブページだ。まずスピログラフを見てみよう。ユーザーが「その原理をわかりやすく説明するインタラクティブなスピログラフを作って」と一言伝えると、モデルは1分12秒考えたのち、直接以下のページを生成した(実際の動作記録)。

GPT-5.6 が生成したインタラクティブなスピログラフの実演記録:右側の4つのスライダー(固定リング半径 / 回転円半径 / ペン位置の距離 / アニメーション速度)を動かすと、左側の曲線がリアルタイムに再描画され、現在のパラメータで曲線が閉じるのに必要な周回数も表示される。出典:OpenAI 公式ブログ
モデルが自らページに書き込んだスピログラフのパラメータ方程式
x = (R − r)·cos(t) + d·cos(((R − r)/r)·t)
y = (R − r)·sin(t) − d·sin(((R − r)/r)·t)
6 テンプレート再現

PPT テンプレートを模写する——誰がより忠実に再現できるか

GPT-5.6 は参考資料一つから、版式・フォント・余白・配色・繰り返し現れるコンテンツパターンなど、マスタースライド(Slide Master)に隠されたルールを含む一連のデザイン規範全体を推測でき、その約束事を新しいコンテンツに一貫して適用できる。公式は「参考ファイルどおりに数字を更新する」という比較実例を示している。同じ参考テンプレートで、GPT-5.5 はマスタースライドの重要な要素を見落としたが、GPT-5.6 はより完全に参考構造に従った。

参考テンプレートのスライド
① 参考テンプレート:その版式やマスタースライドの要素どおりに数字を更新するようモデルに要求。出典:OpenAI 公式ブログ
GPT-5.5 の出力スライド
② GPT-5.5 の出力:マスタースライドの重要な要素を見落としている。出典:OpenAI 公式ブログ
GPT-5.6 の出力スライド
③ GPT-5.6 の出力:より完全に参考構造に従っている。出典:OpenAI 公式ブログ

同様の改善はドキュメントや表にも表れている。複雑な参考フォーマットへの追従がより忠実になり、数式や財務モデルの処理がより正確になり、レイアウト・余白・階層・ページ構成もより的確に使いこなせる。こうした点は、フォーマットどおりに繰り返し成果物を出す必要がある知識労働に直接影響する。

「本番レベルのアプリケーションを作る背後にある長く複雑なプロセスにおいて、GPT-5.6 は高い効率を発揮する。Lovable が現在採用しているモデルの一つとして、同じタスクを完了するのに必要なステップ数が約25%減り、ツール呼び出しは35%から48%減少し、同時にプロジェクトの成功率を高め、停滞する実行を15%減らした。」Fabian Hedin、Lovable 共同創業者
7 サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティ能力が一段跳躍——公式はどう管理しているか

GPT-5.6 は現時点で OpenAI 最強のサイバーセキュリティモデルであり、しかも使用トークンは少ない。3項目のテストの跳躍は明確だ。ExploitBench(脆弱性コードへの到達から任意コード実行の実現までの進捗を測定)は GPT-5.5 の47.9%から73.5%に上昇。ExploitGym(実際の脆弱性を利用可能なエクスプロイトプログラムに変換)は2時間の制限内で15.1%から24.9%に上昇し、6時間まで緩和すると33.7%に達する。SEC-Bench Pro(複雑なソフトウェアでの概念実証生成)は45.8%から71.2%に上昇。

ExploitBench · GPT-5.5
47.9%
ExploitBench · GPT-5.6
73.5%
SEC-Bench Pro · GPT-5.5
45.8%
SEC-Bench Pro · GPT-5.6
71.2%
ExploitGym · GPT-5.5
15.1%
ExploitGym · GPT-5.6
24.9%

公式がこの能力に下した安全判断はこうだ。GPT-5.6 はバイオセキュリティ・サイバーセキュリティのいずれにおいても以前のモデルより強力になったが、両分野とも「重大リスク」(Critical)の閾値は超えていない。サイバーセキュリティに関して、公式のテストでは「脆弱性の発見と修正」により長けていると評価しており、強化された標的に対して自律的にエンドツーエンドの攻撃を確実に仕掛けられるわけではないため、防御側にシステムを事前に補強する猶予が生まれるとしている。防御系タスク(セキュアコードレビュー、パッチ適用、脅威モデリング、ブルーチーム演習)がこのモデルが重点的に支援する方向だ。

管理方法としては、GPT-5.6 の防護は多層構造になっている。モデルに組み込まれた防護に加え、リアルタイムチェック、継続的モニタリング、アカウントレベルの管理を組み合わせている。公式はさらに「推論モニター」という仕組みを追加し、低知能な分類器のフラグだけに頼るのではなく、会話全体を振り返って危害の可能性を判断させる。以前と比べ、Sol のサイバーセキュリティ防護が潜在的に有害な行為を遮断する力は約10倍になった。誤って遮断された正常な利用については、ChatGPT と Codex 側でワンクリックで能力の低いモデルに切り替えて再試行できるオプションを用意している。公開前には、公式は約70万 A100e GPU時間に及ぶブラックボックス自動レッドチームテストを実施した。

約10倍
Sol のサイバーセキュリティ防護が潜在的に有害な行為を遮断する力、以前のモデルの約10倍
9月1日
個人ユーザーは2026年9月1日までにハードウェアキーによる二段階認証を有効化しなければ、最強のサイバーセキュリティモデルへのアクセス権を失い、デフォルト設定に戻される
Trusted Access for Cyber とは何か

これは OpenAI Daybreak が身元確認済みのセキュリティ研究者や機関向けに提供する高度な権限プログラムだ。確認済みユーザーは、認可された環境で脆弱性の分類・検証、マルウェア解析、検知エンジニアリング、パッチ検証など、より強力な防御能力を利用できる。未確認のユーザーはこの権限を得られない。最も機微な能力はこうした信頼できるユーザーに限定されており、「正当な防御作業を許可すること」と「深刻な悪用を防ぐこと」のバランスを取っている。

8 総合ベンチマーク

ベンチマーク全表:どこで Claude を逆転し、どこでまだ及ばないか

OpenAI が強調して見せているグラフは、いずれも自社が優位に立つ項目だ。付録にある完全なベンチマーク表を広げてみると、より全体像が見えてくる。GPT-5.6 Sol には圧倒的にリードしている項目もあれば、Claude Mythos 5 に逆転されている項目もある。以下ではカテゴリ別にいくつかの重要な比較を挙げる。

テスト(カテゴリ)GPT-5.6 Sol対抗馬の最高成績優勢な側
ARC-AGI-3
(抽象推論)
7.78%1.5%
Claude Opus 4.8
GPT が圧倒的リード
OSWorld 2.0
(PC操作)
62.6%54.8%
Claude Opus 4.8
GPT がリード
コーディングエージェント指数
(Coding Agent)
8077.2
Claude Fable 5
GPT がリード
BrowseComp
(ウェブ閲覧、Sol Ultra)
92.2%88%
Claude Mythos 5
GPT がリード
SWE-Bench Pro
(実コードベース)
64.6%80.3%
Claude Mythos 5
Claude がリード
FrontierMath Tier 4
(超高難度数学)
83%87.8%
Claude Mythos 5
Claude がリード
総合知能指数
(Intelligence Index)
58.959.9
Claude Fable 5
Claude がわずかにリード
Toolathlon
(ツール呼び出し)
58%61.7%
Claude Mythos 5
Claude がリード
5倍以上
ARC-AGI-3 の抽象推論で、Sol は7.78%を獲得し、2位の Claude Opus 4.8(1.5%)の5倍以上。注:Opus 4.8 のこのスコアは max 設定ではなく high 設定でのものであり、同一設定同士の比較ではない。
より多くの分野別スコアを見る(学術・マルチモーダル・長文脈など)
テストSolTerraGPT-5.5Claude 最高
GPQA Diamond94.6%92.9%93.6%94.6%(Mythos Prev.)
FrontierMath Tier 1-389%84.9%85.3%87%(Fable 5)
MMMU Pro(ツール使用あり)84.6%82%83.2%
GraphWalks BFS 1M77.1%71.2%45.4%79.4%(Mythos 5)
GDPval-AA v2(Elo)1747.815931493.71759.6(Fable 5)
Terminal-Bench 2.188.8%87.4%85.6%88%(Mythos 5)
BenchCAD(python)83.4%78.2%55.8%65%(Mythos 5)

脚注:HealthBench Professional は OpenAI 自社論文の採点方式を用いており、Anthropic のシステムカードの方式とは異なるため、両者の数値は額面どおりに比較できない。マルチエージェント(ultra)の評価では、レイテンシは主エージェントのみで計算し、トークン数とコストはすべてのサブエージェントを合算している。

9 プロダクトの変化

モデル発表だけではない——Codex が ChatGPT に統合、自分で作業をこなす ChatGPT Work も追加

GPT-5.6 と同じ日、OpenAI はプロダクトの構図にも手を入れた。ChatGPT Work をローンチし、独立していた Codex アプリを ChatGPT に統合した。それを駆動しているのがまさに GPT-5.6 だ。この半分の変化はモデル本体に劣らず重大なものだ。

ChatGPT Work とは何か:Codex を内蔵した ChatGPT agent で、様々なアプリからコンテキストを取得し、一つの目標をステップに分解し、完成した表・スライド・ドキュメント・ウェブページを直接渡してくれる。アドバイスをくれるのではなく、成果物をくれるのだ。スケジューリングができ、バックグラウンドで自分で複数ステップのタスクを走らせられ(Anthropic の Claude Cowork に対抗)、ローカルのファイルやアプリを使えるほか、新たに内蔵されたブラウザでウェブサイトやオンラインファイルにアクセスすることもできる。Plugins によって各種システムに接続でき、フォルダや zip をドラッグするだけですぐに動くウェブサイトに変えられる新しいテスト機能 Sites もある。

デスクトップ側の統合:これまで独立していた Codex アプリは、新しい ChatGPT デスクトップアプリ(Mac・Windows いずれにも対応)に統合された。Chat・Work・Codex の3つのインターフェースはすべてのプラン(無料版を含む)で使える。すでに Codex アプリを入れているユーザーは、アップデートするだけで新しい ChatGPT デスクトップアプリに切り替わる。一方、これまでの ChatGPT デスクトップアプリは ChatGPT Classic と改称された。

旧 Codex アプリ
+
ChatGPT アプリ
新 ChatGPT デスクトップアプリ
Chat · Work · Codex 三位一体

デスクトップ側は三位一体になり、すべてのプラン(無料版含む)で利用可能。旧独立版は ChatGPT Classic に改称。

🧭
この一手は突然出てきたものではない。すでに 2026年5月16日の時点で、OpenAI はコンシューマー向け ChatGPT チームと Codex チームを一つのコアプロダクトグループに統合し、社長・共同創業者の Greg Brockman が率いる体制にしていた。この統合はプロダクト上の決定であると同時に計算資源上の決定でもあり、Brockman は計算資源がハード制約だと述べている。同時に、IPO 前の簡素化として外部から読まれてもいる——コンシューマー・開発者・研究という経済モデルの異なる3つのプロダクトラインを、より説明しやすい一つの物語にまとめる狙いだ。本日の ChatGPT Work と Codex の統合は、あのチーム統合がプロダクトに落とし込まれた結果である。

いつから使えるか:ChatGPT Work は本日まず Pro・Enterprise・Edu プランに開放され、今後数日で Plus・Business にも拡大される。

10 提供開始と価格

いつから使えて、いくらかかるのか

GPT-5.6 は本日より ChatGPT・Codex・OpenAI API で提供開始され、世界各地に段階的に展開し、今後24時間以内に順次全面提供となる。三段階のうち Sol はフラッグシップ、Terra は GPT-5.5 に近い性能を低コストで提供するモデル、Luna は最速・最安だ。

Free / Go
Terra を使用
Plus 以上
三段階から選択、各自設定可能
Pro / Enterprise
Sol Pro・ultra を選択可

具体的な割り当て:ChatGPT では Plus・Pro・Business・Enterprise ユーザーが medium 以上の設定で Sol を使え、Pro と Enterprise はさらに Sol Pro を選べる。ChatGPT Work と Codex では、Free・Go は Terra を使い、Plus 以上は Sol・Terra・Luna から選んでそれぞれ effort 設定を行える。max 設定は GPT-5.6 を使えるすべてのユーザーが設定画面で有効化できる。ultra は ChatGPT Work では Pro・Enterprise に、Codex では Plus 以上に開放される。

価格(100万トークンあたり)

$5 / $30
Sol:入力$5、出力$30
$2.5 / $15
Terra:入力$2.5、出力$15
$1 / $6
Luna:入力$1、出力$6
30分
新しい prompt キャッシュ機構:明示的なキャッシュブレークポイントに対応し、キャッシュの最短保持時間は30分

キャッシュの課金ルールも更新された。GPT-5.6 以降、キャッシュへの書き込みは非キャッシュ入力価格の1.25倍で課金され、キャッシュの読み取りは引き続き9割引(つまりキャッシュ入力に90%の割引)が適用される。同じ長いコンテキストを繰り返し使うアプリケーションにとって、キャッシュはより予測可能になり、コストもコントロールしやすくなる。

関連リンク

もっと詳しく見るなら

まずは実際の作例をいくつか見てみよう。OpenAI Codex のエンジニア Derrick Choi は、終始 Codex と音声でブレインストーミングし、GPT-5.6 Sol に一発生成(single-shot)でページ全体を作らせ、動作する15個のウェブサイト・UI を作った。以下はそのうちの4つだ。

コミュニティ実測 · 全15例
Derrick Choi による GPT-5.6 Sol 一発生成15例
上記4つのほかにも、ポケモンのインタラクティブなコミック日記、スクロール駆動のカメラワークによる3D プロダクト動画、架空のミシュランレストラン、遊べるブラウザ内シンセサイザー、インタラクティブなブラックホール、ドロミテのホテル、水墨大理石スタジオなどがある。それぞれにデモ動画が付いている。メーカー公式デモ以外の独立した裏付けの一つだ。
X で全15例を見る →
サイト内解読 · もう半分
OpenAI が ChatGPT Work を発表——GPT-5.6 駆動で、ツールを横断してドキュメント・表・スライドを自動生成
GPT-5.6 と同じ日にローンチされ、それによって駆動されるプロダクトライン。本稿の第9節で概要を触れているが、こちらはその完全な解説記事。
ChatGPT Work の解読を読む →
公式原文
GPT-5.6: Frontier intelligence that scales with your ambition
OpenAI 公式発表ブログ本体。全オリジナル図表、完全なベンチマーク付録、本稿で引用した方法論の脚注を含む。
公式原文を読む →
本稿は OpenAI 公式発表ブログ「GPT-5.6: Frontier intelligence that scales with your ambition」(2026年7月9日)をもとにまとめ・編集したものです。文中のスコア・コスト・所要時間はすべて公式自社測定の値であり、レイテンシの一部はオフラインシミュレーションによる推定です。サイバーセキュリティ関連の評価は安全対策を意図的に下げた条件下で行われており、いずれも第三者による独立検証は経ていません。 · 小互 · AI解読サイト