OASIS Devices がスマートリング「OASIS 1」を発表、小声でつぶやくだけで文字入力
- マイアミのスタートアップ OASIS Devices が2026年6月30日、チタン製スマートリング「OASIS 1」を発表し予約販売を開始。予約価格289ドル、初回出荷は2026年クリスマス前後を予定、数量限定。
- 核心機能は「つぶやき入力」。リングを口元に近づけ、ほとんど聞こえないくらいの息声で話すと、内蔵のノイズキャンセリングマイクが拾い、Wispr Flow のディクテーション技術でリアルタイムに文字化する。
- リングには触覚フィードバック付きの静電容量式タッチパッドと、スワイプ・モーションジェスチャーも内蔵されており、それぞれ誤字修正・ナビゲーション・スクロールに使う。音声・タッチ・ジェスチャーの3種類の入力方式を1個のリングに統合している。
- スペック:チタン製、リング本体のみで最長16時間駆動、充電ケース併用で公式表記約9日間。iPhone、Mac、Vision Pro に対応、音楽は Spotify、Apple Music に対応。
- 同社は2025年12月にすでに第一世代のタッチパッド専用リングを出荷済み。OASIS 1 はマイクを追加し「つぶやきディクテーション」を売りにした新世代モデル。創業者 Ricky Rosa は単独創業で、チームはマイアミ、デンバー、中国、アブダビに分散している。
マイアミの小さな会社が、キーボードの次を目指す
2026年6月30日、マイアミのスタートアップ OASIS Devices がチタン製スマートリング「OASIS 1」を発表し予約販売を開始した。売りは、リングを口元に近づけほとんど聞こえないくらいの「つぶやき」で小声を話すと、それが文字に変換されるという点だ。
プライベートな音声入力・タッチ操作・ジェスチャーという3つの入力方式を1個のチタン製リングに統合しており、公式のスローガンは「Speak private, stay present」——つまり、人前で目立たず密かに話しかけて、デバイスに指示を出しながらも目の前のことから意識をそらさない、という意味だ。
創業者兼CEOの Ricky Rosa の見立てはこうだ。キーボード、マウス、タッチスクリーンは、いずれも「ノートPCとスマホに搭載されたコンピューター」向けに設計されたものだ。しかし今、AI はメガネ、ロボット(彼はテスラの Optimus を名指しした)、自動運転車の中へと広がりつつあり、これらのデバイス自体にはキーボードもタッチスクリーンもない。彼はこれを一言でこうまとめる——コンピューティングはすでにあらゆる場所にあるが、人の意図はいまだ画面の裏に閉じ込められている。OASIS は自らを「キーボードの次の第一歩」と位置づけている。
まずは見た目から:これはヘルスリングではない
素材はチタンで、充電ケースが付属する。見た目は Oura のようなスマートリングに似ているが、位置づけは異なる。あちらは睡眠・心拍・体温といったヘルスモニタリングが売りだが、OASIS 1 は「操作」のためのものだ。
創業者の Rosa はここに明確な線を引く。「これはヘルスリングではなく、操作のためのリングだ」。狙っているのは手首のヘルスモニタリングリングの座ではなく、キーボードとマウスの役割そのものだ。
音声アシスタントはなぜ気まずいのか
音声入力は実際のところタイピングより速い。だが昔からの問題がある——「声に出す」必要があるという点だ。オープンオフィスや地下鉄、会議室で、スマホやイヤホンに向かって大きな声で指示を読み上げれば周囲に丸聞こえで、これを理由に使わなくなる人は多い。
OASIS の設計動機はまさにここにある。リングは手に装着するため自然と口元に近く、マイクをぎりぎりまで近づけられる。そこで息声で小さく話し、貼り付くほど近いマイクにしか拾えないレベルまで音量を絞る。これにより、音声のスピードを保ちながら、タイピングが持つプライバシー性も取り戻せる。
通常の音量で声に出す必要があり、マイクが口から遠いため公共の場では周囲に丸聞こえ。プライベートな内容を口にしたり会議中に使うのは気まずい。
リングを口元に寄せ、ささやき声レベルの息声で話す。貼り付くほど近いマイクにしか拾えず、公式デモでは静かに文書へ「書き込み」でき、周囲を邪魔しない。
「つぶやき(whisper / subvocal)」は完全に無音の読心術ではなく、話す音量をささやきレベルまで絞ったものだ。会議中に隣の人の耳元でこっそり話すのと同じ感覚で、ただ今回話しかける相手はリングに内蔵されたマイクというだけだ。
3種類の入力が、どうやって1回分の完全なタイピングになるのか
音声だけでは、タイピングという行為は完結しない。AI のディクテーションにミスはつきものなので、その場で修正できる必要があるからだ。OASIS の工夫は、音声だけに頼らず、音声ディクテーションと使い慣れた「ポインティングデバイス」を組み合わせた点にある。これにより、話す・直す・切り替えるという3つの動作を1個のリングで完結できる。
つぶやき声はノイズキャンセリングマイクに拾われ、Wispr Flow の AI ディクテーションによりリアルタイムでテキスト化されて任意のアプリに書き込まれる。誤りがあれば、触覚フィードバック付きの静電容量式タッチパッドを使い、指先でカーソルを動かしてその場で修正する。さらにスワイプやモーションジェスチャーでナビゲーションとスクロールを行う。一連の入力の中で、音声が「書く」役割を、タッチが「直す」役割を、ジェスチャーが「めくる」役割を担う。
3種類の入力、それぞれの役割
下のタブをクリックすると、音声・タッチ・ジェスチャーそれぞれの役割が確認できます。
つぶやき音声 → テキスト化
口元に近づけて小声で話すと、ノイズキャンセリングマイクが拾い、Wispr Flow がテキスト化してアプリに書き込む。「タイピング」の大部分を担い、速くてプライベートだ。
静電容量式タッチパッド(触覚フィードバック付き)
タッチパッドは小型で、振動フィードバックによりタップできたか、どこまでなぞったかを指先で感じ取れるため、画面を見つめる必要がない。スマホでボタンを押したときの微振動に似ているが、ここでのフィードバックはリングサイズのタッチパッド上での指先の動きに対するものだ。主にディクテーションのミスをその場で直したり、カーソルを動かしたり、画面内をナビゲーションしたりするのに使う。
スワイプ・モーションジェスチャー
公式サイトにはスワイプとモーションのジェスチャーも紹介されており、ページのスクロールや選択、デバイスの操作に使う。音声とタッチ以外の操作を補完する役割だ。
Wispr Flow とは何者か、なぜ重要なのか
Wispr Flow は音声ディクテーションを専門とする AI 技術企業で、マイクが拾った音声をリアルタイムでテキストに変換する役割を担う。OASIS はこの認識技術を自社開発しておらず、リングに組み込む「特徴的な統合機能」として採用している。つぶやき入力が成立するかどうかは、大きくこのディクテーションの精度と遅延にかかっている。Rosa によれば、次のステップとして Wispr Flow との統合を深化させ、対応ソフトを増やしていく予定だという。
Rosa が強調するのは、これは一夜にして働き方を変えろという話ではなく、リングを「今日のキーボード」と「将来 AI が意図を理解する世界」との間をつなぐ橋として位置づけているということだ。
どれくらい持つか、どの機器に対応するか
以下は公式サイトが公開しているハードウェアスペックで、自分の使っているデバイスで使えるかどうかの判断材料になる。バッテリー駆動時間は公式の表記値。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 素材 | チタン |
| マイク | ノイズキャンセリングマイク |
| タッチパッド | 静電容量式、触覚フィードバック付き |
| 対応デバイス | iPhone、Mac、Vision Pro、複数デバイス間の切り替えに対応する設計 |
| 音楽 | Spotify、Apple Music |
| 特徴的な統合機能 | Wispr Flow(音声ディクテーションプラットフォーム) |
リング作りは今回が初めてではなく、一人だけの戦いでもない
OASIS 1 は企画書上だけのコンセプト製品ではない。同社は2025年12月にすでに最初のリング(タッチパッド専用版)を出荷済みで、今回予約販売される OASIS 1 は、それをベースにマイクを追加し「つぶやきディクテーション」を売りにした新モデルだ。
ちょっと変わった資金調達エピソード
初期の投資家との関係は、テキサス・インスツルメンツ(TI)が主催したワイヤレス充電をテーマにした技術フォーラムから始まり、そこから独自のスマートリング開発をずっと続けていたオーストラリア人医師のグループへとつながった。Rosa 曰く「ネットで人と知り合うのは面白いものだ」。
まだ手元にないものを、どこまで信じるか
率直に言おう。現時点で確かなのは製品形態、スペックの表記、そして同社に出荷実績があるという事実だ。確かでないのは、実機を手にしたときの体感がどうかという点だ。この不確かさは製品そのものに由来するもので、解読の過程で付け足したものではない。
これは予約販売であり、すでに発売済みではない。289ドルを今注文しても、製品が届くのは2026年クリスマス前後になり、初回ロットは数量限定だ。予約販売は市場での検証を経たことを意味しない。
公式デモはマーケティング映像だ。スワイプ、つぶやき、モーション、テキスト編集といった一連のシーンは公式が撮影したデモであり、実際の使用感、認識精度、遅延は実機を手にしてみないとわからない。
公共の場での「見られ方」が成否を左右する。Digital Trends ははっきりこう指摘している。人の多いオフィスでリングに向かって小声でつぶやくのは、やはり周囲から奇異な目で見られる可能性がある、と。つぶやき入力がタイピングと同じくらい自然でプライベートに感じられるかどうかが、この製品の成否を分ける核心部分だ。
小規模チーム、単独創業。これは非常に小さな会社であり、ハードウェアの量産、供給、アフターサービスの体制は、まだ大規模な検証を経ていない。
キーボードの先で、人はどうやって機械と話すのか
今回の発表を、業界が抱える大きな問いの中に位置づけてみよう。AI は画面の中から飛び出し、メガネ、ロボット、自動車へと広がりつつあるが、人がこうした AI に指示を出す方法は、いまだキーボードとマウスにとどまっている。
Rosa は OASIS の目標を「意図のためのオペレーティングシステム」(operating system for intention)を作ることだと語る。タッチと音声を、人が機械に要求を伝える主要な手段にしようというわけだ。手に装着でき、プライベートな音声入力も精細なタッチ操作もできる1個のリングは、「ポストキーボード時代の人とコンピューターのインタラクションはどんな姿をしているか」という問いに対する具体的な一つの試みだ。これが最終的な答えとは限らないが、方向としては繰り返し議論されているこの問題を突いている。
コンピューティングはすでにあらゆる場所にあるが、人の意図はいまだ画面の裏に閉じ込められている。 OASIS Devices 創業者 Ricky Rosa、Refresh Miami インタビューより